火星の月の下で

日記がわり。

美酒か霊液か

ホフマンのWinkler版『悪魔の霊液』を引っ張り出してきて、拾い読みしてるのだが、何度読んでも面白いね。
ホフマンの散文作品はだいたい以下の4つに分類される。
・二つの長編小説:『悪魔の霊液』『牡猫ムルの人生観』
・三つの中編小説:『ちびのツァッヘス』『ブラムビラ姫』『蚤の親方』
・四つの短編小説集:『カロ風幻想曲』『夜景集』『ゼラーピオン同盟』『最後の物語集』
・音楽論文。
これら以外にも音楽作品とかもあるけど、散文としては通例この四種。
幻想作家ホフマンとして取り上げられるのは、このうち短編集から拾われることが多いようなのだが、長編や三つの中編もなかなかに個性的で大好きなのだ。

で、今回、寝床に引っ張り出してきてつらつら拾い読みしているのだが、最近だと『悪魔の美酒』という訳題になることが多い。
原題は『Die Elixiere des Teufels』なので、イマ風にするなら『悪魔のエリクサー』でもよさそうなものなのだが、中身を読むと「美酒」が適当かな、という気もする。
邦題としては、「美酒」か「霊液」だったことが多いような気がするが、まだ統一的な形にはなっていないようだ。
個人的には「霊液」の訳題の方が好きだったんだけど。

初めて読んだのは40年以上前、ほとんど半世紀近い昔で、原書ではなく中野さんの訳によるものだった。
そのとき魅了されてしまい、当時まだ訳されていない他のいくつかを読みたくて船便で注文していたWinkler版の全集が届くや、すぐに読みふけっていた若いころを思い出す。
感想を書き出すと長くなるので控えるが、いつ読んでもひきこまれてしまうのは、やはりこの作品と波長があっているんだろう。