火星の月の下で

日記がわり。

スターシップオペレーターズ

スターシップオペレーターズ、第4巻まで読了。今第5巻を読んでる途中なんだけど、一応第4巻で第1部・了、ということなんで、アニメとの比較の意味でいろいろとみていってみようと思う。それに早くしとかないと、そろそろ妹オーディションの発売日だしね。
アニメ版との比較はだいたい擁護集に載っているので、そっちを意識しつつ、簡単に感想を書いていってみよう。
http://eswat.k-server.org/sto.htm

まず、アニメ版でカットされてるところ。シノン達がスターシップチャンネルの視聴率を稼ぐために、いやいや出演させられる、アイドル活動の側面がばっさり切り落とされている。具体的には、休暇惑星での水着シーン、アニメ第3、4話直前、サンリの気持ちを察して第2艦橋と第1艦橋とが冷戦状態になり、結局放送作家の依頼で、レオタードプロレス(実際は護身術大会)にされてしまうところ、そしてなにより惑星シュウでのシノン、ミユリ、アレイら3人によるファーストコンサート。1クール13話分しか枠がとれなかったとしたら、これらをいれていってるととてもたりなくなるからだと思うけど、今週放映分にあれだけオリジナルをぶちこむくらいなら、当初から第1部つまり第4巻までに話を絞ってやってもよかったんじゃないか、と思う。
アイドル活動以外では、イリキ、コウキ、レンナってあたりを勝手に殺してしまったこと。まぁ、イリキは原作でも別のところで死ぬけど。レンナの死は、特に疑問に思う。原作では、銃創を負ったレンナを見舞いに来た女子クルーたちによって団結が一段と高まる描写があっただけに、はたしてあれで原作以上の効果が得られたかどうか、甚だ疑問。コウキを殺してしまうのも、第1部でまとめておけばその必要はまったくなかったわけで、あれだと続編とか新規展開がやりにくくなる、っていうか、まったくの別物になってしまうかもしれない。まぁ、続編なんてのは、今回のシリーズがそこそこ経済的成功をおさめないと無理なわけだから、考えなくてもいいのかもしれないけど、あまりにもキャラクターの安易な消費がむごいような気がする。
経済という面で言うと、この作品を際立たせているのが、戦争にかかるお金を常に言及している点で(スターシップチャンネルとの契約もここから起こっているわけだから、かなり重要なはず)些細な点だけど、例えば第1巻で出てきた、荻野セイがプロデューサーにブックマークを提案するところとか、プロデューサーのピーター・スパイクスがディータ・ミルコフの着替えの提案をけってしまうところとか、武器の使用順位に価格が影響してくるところとか、そういったものが切り落とされているだけじゃなく、暗示さえもなされていない、っていうのが見なおしててかなり不満だった。特にスパイクスがディータの提案を蹴るときに、「ディータの魅力で契約した視聴者もいる、過去にその着替えで人気を出たことも確かだ、しかしディータの着替えはもう旬をすぎている」という判断がはっきりとは書かれていないものの暗に示されている(特に、スパイクスとディータがほぼ公然の恋人関係になっているにも関わらず、である)あたり、出資側の経済感覚と、「俺たちが死ぬのは肉体ではなく、映像が出せなくなったときだ」のようなことを言っちゃうスパイクスの業界人としてのすごさが垣間見えて、なかなかいいエピソードだと思ったんだけどねぇ。ちょっと深読みしすぎかな?(笑)
キャラデ的にも、原作イラストの内藤氏の絵が秀逸なので、あまりに萎え萎えなアニメ版のキャラにはどうにもしっくりこない。キャストも約1名のチクノー声優を除いてほぼ満足できるだけに、残念至極。

アニメ版があまりに萎え萎えだったので、その逆の効果からか、かなり原作は面白いのだけれど、アラがないわけでもない。細かいところはいろいろとあるけど、大きなところとしては、あれだけ宇宙航行を詳細に描いておきながら、乗組員のホルモン調整の描写がほとんどないこと、医療チームの構成が、あまりに非SF的であること、この2点はかなり不満だったりします。前者はBEMの名作「宇宙船ビーグル号」を、後者は最近読んだ小川一水の「強救戦艦メデューシン」のことが頭にひっかかっているからかもしれません。あと、些細なことだけど、具体的な地名の出し方がやや偏っているので、宇宙地理的な広がりが、出されている数字の割には感じられないことも、少しあるかな。
まぁ、とはいえ、面白い部類ではあると思う。擁護集の人も書いてるけど「青春群像劇」みたいな面白さはたしかにあると思う。