火星の月の下で

日記がわり。

○ゼロ年代回顧

2000年−2009年。
私にとっては、奈良での10年、という感じで、2000年に奈良に引っ越してきて、それから10年、といったところ。
幻想文学
前半が、散文から詩へ、後半が妖精芝居へと関心が傾いていった10年だった。
18世紀から19世紀前半にかけて流行した、吸血鬼詩、魔法使い詩、19世紀後半から表現主義時代に流行したモリタート、といったあたりを読み始めたのが前半。
従来、ゲーテのバラードでしかなじみがなかったこの分野も、ドイツやチェコでそういったテーマのアンソロジーが編まれることによって、遠くこの東洋の地にいても、おぼろげながらその深さがわかってきた。
人生の残り時間を考えると味わいを得るところには到着もできないだろうけど、チェコ語を勉強して、いくつか読み始めたのもこのあたり。
独文学における独・吸血鬼詩以上に正嫡文学史では取り上げられないので、探すのがすこぶる困難ではあるが。
後半が、ライムント、ネストロイの再読。
ライムント自体はそれこそ20代前半の頃から読んでいたけど、若い頃は、味付けとも言うべき底抜けの明るさにちょっとついていけず、その背景に見え隠れする人生の苦味、諦念、といったものには気づいてはいたが、そこにひきつけられるほどではなかった。
だが、そこそこの年齢になってくると、この人間嫌いや不信感、といった、ライムント喜劇の底流に流れている暗い動機がけっこう胸をうつようになってくる。
黒く深い悲劇は喜劇的手法によって、もっとも効果的に現れる、というのがだんだんわかったきた。
・アニメ。
まぁ、いつも通り、というか、作品が代わっただけで、スタンスそのものはそんなに変わってないので、この10年も良作にめぐり合えて嬉しい、といったところか。
空洞化の問題、現場の生活苦等、多くの問題は抱えているが・・・。
ラノベ
これもペース、スタンス自体はアニメと大差ないものの、アニメに比べて量的に多すぎなので、対応しかねる、というのが正直なところ。
とてもリアルタイムでは対応できないばかりか、下手すると発売されてから1〜2年経って読んでる、なんてこともしばしば。むむむ。
この10年で特に好きだったシリーズは以下の通り。(現時点で未完結、含む)
『カラミティナイト』(高瀬彼方)・・・ただしハルキ文庫版の方。
『Shi-No』(上月雨音
アレクサンドロス伝奇』(榛名しおり
銀盤カレイドスコープ』(海原零
・・・くらいかな、もっとあったはずだけど、書棚を見ずにパッと出てくるのがこの辺だから、印象度としてはそんなに間違ってないだろう。
・宗教史。
90年代は、ゾロアスター教関連の文献に埋没していた感じだったが、ゼロ年代に入って、また東方正教の文献、とりわけコプト教会史やアルメニア教会史なんかを読みふける。・・・もっとも、後半、というかこの4〜5年はけっこうペースが落ちたけど。
・映像。
奈良に引っ越したのを契機に、CATVをメインにすることに決め、その副産物として、CSチャンネルが自由に見られるようになった。
中でも、ヒストリーチャンネルアニマルプラネットには最初の2年くらいはアニメより視聴時間が長かったのではないだろうか。
好きなチャンネルとしては、上掲のヒストトリーとアニマル、それに、時代劇、日本映画、NECO、ディスカバリー、ジオグラ、といったところか。あ、アニメ系はデフォなんで、書かないけど。(笑)
・ペット。
歳のこともあって、蛇、蜥蜴、両生類有尾、無足、といった飼育体制から、ほとんど蛇と蜥蜴だけに移行。
さびしいが、体力的に飼えないとわかってしまったからには、無理をするとお互いのためにも幸福な結果にはならないので、飼育仲間に譲ったりして、飼育数を減らす。
反面、一戸建に移ったのを機に、猫を飼い始める。
・音楽。
前半はあんまり聞いてなかったが、05年頃から、また少しずつライブラリを増やしている。
LPで所有していたのを買いなおす、というのは、どうもしっくりこないこともあるのだが、LPプレイヤーがもう手元にない以上仕方がない。
興味対象としては、まず室内楽、これは50年近く変わらない趣味。
ついで、協奏曲、歌劇。
作曲家としては、幼年期はモーツァルト党、20代以降はブラームス党で30年以上やってきたが、ゼロ年代に入って、ブラームス周辺の新古典派、ドイツ浪漫派、にひきつけられていった。
なかでも、ブルッフゼロ年代に入って、一番よく聞いていた音楽のような気がする。
ブルッフは代表曲である「ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調」だけ聞いていれば十分、というのは、音楽史的な意味では正しいかもしれないが、ブラームス好きとしてはもっと積極的に聞いていくべき音楽だと思う。
独奏ヴァイオリンと管弦楽の小品、オラトリオ等、けっこう趣味にあう曲があって、なんか人知れぬお宝に遭遇したような快感があったりする。
・その他。
プライベートなことはあんまり書きたくないが、このブログでも書いているので、07年の骨折と入院について少し。
この10年、身辺に起こった最大のできごとといえば、やはりアレになる。
入院すると、人生に対して見方が変わる、というのを実感できた。
骨折自体はたいしたこともなく、3週で退院できたけど、いざというときの医療費の大切さ、友人、家族のありがたさ、なんかを痛感させられたできごとだった。
こんなとこかな。あんまり面白いことは書けなかったけど、基本は日記だから、まいっか。