火星の月の下で

日記がわり。

○『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(エマニュエル・トッド)を拾い読み

電車の中でサラサラッと拾い読みしただけでまだ精読はしていないため、簡単に感想だけ。
著者がフランスの学者で、ドイツに対して感情的な嫌悪感を持っている、というのがところどころに出てくる。
基本はデータを利用して、特に人口動向や経済依存の指標とか出しているので決して反独感情むき出しの著述というわけではない。
本文中にも「私がフランス人だから言ってるわけではない」と何度か出てくるし、そのためのデータも提出されている。
だがそれでも翻訳のせいなのかもしれんが、嫌独感がビンビン伝わってくる。
しかしそれでもなおこの書は一読に値するな、というのが正直な感想。
まず、EU内部にいてその動きを肌で感じている知的エリートの意見としてかなり生々しく、本音で語ってくれているように感じるからだ。
いくつかのデータも出てくるが、そういった(日本でも集められるかもしれない)データが語る指標以上に、生活圏の中にある「異種の存在」に対する感覚は、遠く離れた地にいる人間にとっては感じにくいところがある。
嫌独感と書いたが、それは逆に著者の本音が正直に出ていることとも関係しているだろう。
したがってこの書の中に出てくる日本の持ち上げ(に見える)箇所についてはEU内部にいる人間の感覚として読むべきだろうな、とも感じる。
「ドイツは輸出でうまくやっていて、日本には及ばないが高い技術力もある」なんて一節などは、日本の技術力を評価しているというより、ドイツの技術力を過大評価するな、ということの裏返しのようにも見える。
日独の国民性としての類似性と異なっている点などは、従来の欧米エリートの視点とそう変わらないが、それを補強するようにデータが提出されているので、かなり納得できる。
そしてロシアとの関連。
ドイツこそがウクラライナ問題の根源であり、ロシアではないこと。
日本がウクライナ問題によって(遡ればドイツの仕掛けによって)ロシアと和解(特亜的な意味での和解ではない)できないでいること。
このあたりは読みごたえがあって(というかこのあたりから最初に読んだ、かなり後半だけど)著者の意図とははずれているかもしれんけど、一日本人としてはもっともひかれたところでもある。
嫌独感の淵源になっている「途中までは理性的にやるけど、てっぺんにのぼるとトラウマで不安定になる」なんてのは、隣国フランス人が常に抱えている対独感なんだろうな、と思うし、嫌独感が流れているとはいっても分析そのものはなかなか鋭く、着眼点も良い。
周辺諸国の前半の経済的隷属、フランスの半隷属、英、デンマークが脱出しかかっていること、このあたりはまだちゃんと読んでいないのでこれから読む予定だけど、ベースがフランス国内のインタヴューを中心にまとめられたものなので、どの章から読んでも読める。