火星の月の下で

日記がわり。

滅びの美学

「フランダースの犬」日本人だけ共感…ベルギーで検証映画
面白いなぁ、この、ルーベンスの画の前に行って陶酔するっていうのは、かなり前に聞いた話で、相当以前からあったと思う。
上の文面では書かれてないけど、原作がどうこういう以前に、アニメの影響、ということの方がはるかに大きいと思うんだが、まぁ、骨子としてそういうのを置いてみると考えやすい、ということだな。
それにしても、
>原作は英国人作家ウィーダが1870年代に書いたが、欧州では、物語は「負け犬の死」としか映らず、評価されることはなかった。
・・・厳しいねぇ。(笑)
これに似た話として、独文学やデンマーク文学の方で同様の話があって、小説『アルト・ハイデルベルク』と、詩『山のあなた』、それにアンデルセン*1童話『マッチ売りの少女』なんがかある。
『アルト・ハイデルベルク』と『山のあなた』はドイツ人でも相当の文学者でなければ忘れられてしまっている作品だが、戦前日本でドイツ語の教科書として使われたこと、それに『山のあなた』は上田敏の名訳で広く世に知れ渡ったことなどから、本国では予想だにしない人気を勝ち得ている。もっとも『アルト・ハイデルベルク』も戦前ほどの人気ではなくなってきてはいるが。
また『マッチ売りの少女』なども、これは無名になってしまった、というわけではないが、現在の高水準の社会福祉を誇るデンマーク人にとって、かなりの負の側面に感じられるらしく、日本人とは違う意味で現実感の希薄な絵空事に見えるようだ。
上の『フランダースの犬』にしても、原作の解釈の違い、というよりは、媒介としてあったアニメの影響が大きいと思う。もちろん、アニメ化される以前から、日本人独特の、上で書かれているような「滅びの美学」に支えられた人気があったことは否定しないが。
とにかく面白い。
どういう形の映画になっているのか、ドキュメンタリーと言ってるから、観光客や現地取材なんかも出てくるだろうし、その中でアニメの部分も語られるだろうとは思うけれど、かなり興味をひく題材ではあるね。

*1:アンデルセン、と発音している国は日本だけなので、正しく原語に近くアナスン、もしくはアンナスンとするか、あるいは経由して入ってきた英語のアンダーソン、もしくは独語のアンデルゾーンとでも表記するべきなんだけど、慣例に従って、アンデルセンとしておく。