火星の月の下で

日記がわり。

○『オタク大賞』と『おたくの本』

11日の記事オタク大賞に対する違和感について述べたが、もう少し具体的に書いたみたい。
というのも、書庫を整理してたら、1989年発行の『別冊宝島104 おたくの本』が出てきたからで、そこに記載されているオタク現象と、先日のオタク大賞とのズレが感じていた違和感にかなり近かったからだ。
でまぁ、あたりまえのことだけど、
1. ジャンルとしてのオタクを決めるものではない
2. 代替候補としてあげているわけではない
3. おたくとしての正邪を語るものではない
4. オタク大賞該当作品それ自体に対する批判、不満ではない
・・・・といったあたりを前提として書いていく。
ただ、オタク現象の中心にいたジャンルか、外縁部か、という程度の表現は使うが、それとても、外縁部がおたく現象、対象ではない、という意味ではない、というのも一応断っておく。
さて、前置きが長くなったけど、まずおたく大賞のジャンルを抜き出してみる。
大賞・『墓場鬼太郎』:マンガ、アニメ。
アニメ版第5期とセットになっているので、ジャンルとしてはかなりアニメ寄りかな。
各・個人賞。
『倉本 倉田の蔵出し』:オタク人生論。
分類わけしにくいけど、ある意味「おたく身内語り」個人的にはこんなことは既に90年代パソ通時代に語られていたと思うが。
浅井真紀:フィギア。
モンスターハンターポータブル 2nd G』:ゲーム。流行ったねぇ。
純情ロマンチカ』:アニメ。BL。
true tears』:アニメ。萌系&聖地巡礼
『TENGIRL』:擬人化。これも分類わけしにくいけど、大賞側がこう書いているのでそれにしたがっておく。
萌え株会社の皆さま:株、といってるから、経済がらみ、と思ったけど、そうでもなく、単に制作側、という不特定対象っぽい。ここが一番よくわからんかった。
ARIA』:漫画、アニメ。
クローバーフィールド/HAKAISHA』:映画、映像。
・・・個々のジャンルについて、けっこうつっこみたいところは多いが、半分くらいが外縁部だと思う。
サブカルでくくった方がかなり多いように見えるのは、選考にそういったところの出身者が多いからなのか。
一方、『おたくの本』。こっちは書物なんで、取り上げている対象は混沌に近いくらい多く、しかも時代特有のものもあって今ではほとんど見なくなったものとかもあるが、かなり中心部に近いところを掬い取っている感がある。
全部は書き出せないので、見出しになっているところを中心に拾ってみると、まずpart1「おたくの現場」
1. ゲーマー超人伝説:アーケードゲーム、ゲーマー、ゲームフリーク誌。
2. アイドリアン:C級アイドル。これは今だと声優に該当すると思う、というか、おっかけの生態とか見てるとかなり酷似してて、乾いた笑みがわいてくるなぁ。
3. アクション・バンダー〜汚れなき無差別テロ:ラジオライフ系。無線系ともいえるが時代的制約がかなりある。現代だとPC魔改造Friio、制服ワッチ、といったところか。
4. カメラ小僧:パンチラと生写真。現代はカメコとレイヤーの10年冷戦。
5. 俺達のデコチャリ痛車痛単車の元祖。
6. コミケットコミケとしかいいようがない。(笑)
part2「おたくという第3の性」
1. ロリコン、二次コン、人形愛:これが唯一オタク人生論に近い感覚かな。しかしこの頃の方が賞を受けた書籍より暗く鋭く深遠だったと思う。
2. やおい族:「やおい」自体は滅んでいないけど、かなりBLにとってかわられつつある。80年代くらいまではやおいにはBL以外も含まれていた。
part3は個々の生態、人物伝、part4が消費社会との関係で、今読んでもそこそこ面白いんだけど、ジャンルとは離れるので割愛。
時代の差があるので、単純な比較はできないにしても、おたく大賞にひどい偏りを感じてしまうのは否めないだろう。
PC、魔改造痛車、声優、Friio、制服むすめ、有名レイヤー、エロゲー、ギャルゲーと言った、今も脈々として受け継がれている、おたく伝統芸、そして昨年確かに特異な現象を見せていた事象がことごとく無視されていて、かろうじて大衆性のあるアニメとBLがいくつか拾い上げられているだけ、という感じなのだ。まさに私の違和感はここにあったので、簡単に記録しておく。
選考から、サブカル関係者ははずした方がいいと思うけどな。もっとも、1日の日記に書いたように、こういった大賞みたいなものを設定していることそれ自体がヲタ・スピリッツからはずれているような気がしているので、この賞自体に疑念というか、ななめ上的な視線を送ることにはなるけどね。