火星の月の下で

日記がわり。

国後・・・それは北方のガラパゴス

昨日の記事で、プーチン来日について書いたついでに、国後島について少し触れたが、変態生物愛好家、爬虫類好きとして、もう少し詳しく書いておく。
・国後青大将。クナシリラットスネーク。国後産アオダイショウ。
爬虫類好きに「国後島」の名前を出すと、まず間違いなく北方領土なんかよりも、この美蛇の名前があがると思う。それぐらい有名なアジアの美蛇である。
本土産アオダイショウ自体も、欧米、特に仏・米ですこぶる人気の高い日本産の美蛇で、「Japanese Beauty Snake」としてよく知られている。
ちなみに、「ビューティ・スネーク」だけなら、南支那から仏印、馬来、蘭印にかけて広く分布している「スジオヘビ」のことで、日本の南西諸島にもこれの亜種・サキシマスジオヘビというのが分布している。近年乱獲でかなり減少傾向らしいが。(^_^;
スジオヘビの方は、人肌のように美しい黄色を地肌として、黒い模様が下半身から線状に流れる、それはそれは美しい中型〜中大型の無毒蛇。
それに対して日本の青大将も、灰緑の地肌に成長に応じて褐色から青色っぽい模様がうっすらと乗る、スジオに負けぬくらい美しい蛇である。
現在世界には米国フロリダとドイツに巨大な爬虫類ブリーダー達のためのイベント即売会みたいなのがあるが、そこの蛇部門でも長らく人気を誇っている。
無毒で性格が「蛇としては」温和、育てやすく、美しく、繁殖も容易で、スペースもそれほどとらず、地域ごとのヴァリエーションにも富み、初心者から上級者まで心ある変態紳士のハートをわしづかみにして離さない至上の美蛇である。
分布域は日本列島4島とその周辺、大隈諸島と、国後島で、特に四国産、南近畿産、信州産、北海道道東産、国後産に美しいものが多いと言われている。
各地域ごとの特質は上げていくときりがないので、このうちの国後産。
一般に「青」ダイショウと言っても、成長とともに、灰色味、褐色味が増すので、かなりの暗がりで見ないと「青っぽさ」「緑っぽさ」は感じられないが、その中にあって、国後島産のものは、比較的灰緑の地が残るため、非常に神秘的、デモーニッシュな美しさが漂ってくるのだ。
蛇を愛する人、爬虫類を愛する人で、この蛇の美しさに心うたれぬ人はいないだろう。
北の島・国後には、このような美しい蛇が生息しているのである。
・国後縞蛇。クナシリ・ストライプ。国後産シマヘビ。
縞蛇も青大将とほぼ同様の分布域で、こちらはむしろ伊豆諸島中の祇苗島にいる「巨大シマヘビ」の方が有名で、国後島産といっても、アオダイショウのように目だって美しい蛇、というわけではない。
だが国後島産のシマヘビは一見してあきらかに色が暗色化しており、不気味な存在感がある。
これまた蛇を愛する変態紳士たちにすこぶる人気があるのだ。
黒いシマヘビ、というと、メラニスティックのカラスヘビが有名だが、国後産の暗色化は、色素黒化とは違う、全体的な雰囲気なのである。
ちなみに青大将も、アルビノ個体が「シロヘビ」と呼ばれて、岩国のものなどは天然記念物になっているようだが、これはアルビノ個体で、白化、つまりリューシスティックとは違う。
ごく少数だが、アオダイショウにもメラニスティック個体は生じるときがある。
・クナシリオオカミ。
忘れちゃいけないのが、国後島にいるという謎の野生狼である。
タイリクオオカミの可能性も残すものの、19世紀末に北海道で滅んだエゾオオカミの可能性もあり、調査研究が待たれているところでもある。
このエゾオオカミ、滅んでしまったニホンオオカミよりはるかに体躯が大きく、大型の肉食獣で、もし生存が確認されれば、すばらしいニュースになるのだが・・・。
・その他、サンショウウオ、イモリ、小型の蛇。
爬虫類、両生類(2つをまとめてハーペトロジーとも言う)マニアでもあまり知られていないが、東シベリアというのは、両生類・有尾、つまりイモリ、サイショウウオの仲間の種類が比較的豊富なところで、当然、樺太から千島、北海道にかけてもけっこう独自に地域進化をした亜種、地域個体群がいる。
中でも北海道東部の根釧原野国後島には密度こそ薄いものの、かなりの地域珍種がひそんでおり、調査研究が待たれている地域でもあるのだ。
国後島は、爬虫類好きの邪神系変態紳士だけでなく、両生類有尾類好きの粘液系変態紳士にも憧れの地なのである。
日本列島は南北に細長く、しかも島ごとに多様な変化があるため、南西諸島、とりわけ沖縄島ヤンバル地域、久米島西表島石垣島などは「東洋のガラパゴス」といわれているが、国後島も、寒冷地ゆえ南西諸島ほどのヴァリエーションがあるわけではないものの、美しい生物、変態チックな生物、希少種の潜む島なのである。
その意味で、国後島は、南西諸島とは別の意味で、われら日本変態紳士憧れの島でもあるのだ。