ブラームス:ヴァイオリン奏鳴曲第1番ト長調op78
せっかく購入したので、感想とかを少しずつ残しておく。まず、ブラームスのヴァイオリン奏鳴曲。
・ブラームス:ヴァイオリン奏鳴曲第1番ト長調op78 Vn:ヨセフ・スーク、Kv:ユリウス・カッチェン(1967年録音)
演奏については、以前書いたとおり。一発でスークのものとわかる、まさに円熟期の録音。
ソリストとしてももちろん、室内楽奏者としても豊かな経験を持ち、ともに響かせ、歌わせるヴァイオリンの長所、魅力を随所に出した名盤のひとつ。
レコード時代は、この曲に関してはシェリングの方が好きだったんだけど、この歳になってくると、シェリングの知的で音楽性あふれるかっちりとした組み立てよりも、スークのやわらかさ、ほんのり漂う艶の方に引かれるようになってくる。
第1楽章ト長調 Vivace non troopo ト長調.
3楽章構成の第1楽章だが、[急]楽章というわけでもなく、中速度より少し速い程度。四重奏以下の重奏でブラームスが良く見せる、内省的な表情が染み入るように心地よい。長調の歌であっても、どこか寂寥の表情を漂わせている。
第2楽章 Adagio 変ホ長調.
緩叙楽章。詩情あふれるロマン派緩叙楽章の傑作。
緩やかであっても、ヴァイオリンの歌う歌は、内に力強く、外に優しい。
モティーフは終楽章でも歌われ、全体の統一感に貢献するが、そういったことよりも、晩秋の物悲しい雰囲気と、ときおり見せる晴れ間のような暖かさがたいへん良い。
第3楽章 Allegro molto Moderato ト短調.
この曲は「雨の歌」と通称がつけられることがあるが、それはこの第3楽章が自身の歌曲「雨の歌」の旋律によるものだからである。だが、その主題そのものが第1楽章第1主題の変奏となっていることもあって、全体の韻律、情緒の統一に貢献している。
結局主調たるト長調に回帰して長調終始するが、初めて情熱が外にこぼれてくるような感じでもある。
作曲時期としては、第2交響曲と第3交響曲の間、ということもあて、3曲のヴァイオリン奏鳴曲野中では一番外交的な要素が強いが、それでも独特の深み、香気が漂っている。