火星の月の下で

日記がわり。

○『散りゆく花』と『DTB2』

映像ライブラリを少し整理してて、何の気なしに『散りゆく花』(1919)を手に取る。
すると鮮やかな記憶がよみがえってきて、昔、まだ東京に住んでいた頃、文芸座やフィルムセンターに足しげく通っていたことを思い出した。
そこで雷鳴のように思い出した記憶、リリアン・ギッシュふんする薄幸のヒロインが、DV親父にいじめられて、笑うことができなくなってしまい、「笑え!」と言われて、指で唇の横を押し上げる名シーンである。
Darker Than Black』で銀が、『DTB2 流星の双子』でジュライが、指で笑顔を作るあの表情である。
『散りゆく花』は何度も見てたし、映像としても保存してたのに、すっかり忘れてたよ。いや、DTBを見たときにも、銀のあの所作を見て「あー、なんか映画でああいうのあったなー」とはぼんやり思ってたものの、すっかり失念していた。
歳はとりたくないもんだね、細かな記憶がボケてきていけない。
欧州無声映画の方が格段に好きだったこともあって、新大陸の映画にはそれほど入れ込んでいたこともなかったのだが、映画黎明期におけるナジモヴァに始まって、ピックフォード、ギッシュ姉妹、そしてスワンサン、ネグリへと続く、絢爛豪華な米国銀幕女優史については、欧州出身者が多かったこともあって、名前程度はいくつか知ってはいた。
その中で、日本で名前の下に、「嬢」とか「夫人」とかっていうのをつけられて紹介されていた、というのも有名なエピソード。
中でも「ナジモヴァ夫人」「ピックフォード嬢」と並んで、「リリアン・ギッシュ嬢」というのは、本邦においては大人気であったらしい。
いろんな形容詞もつけられていたようだが、妖艶ナジモヴァ夫人、明朗快活メアリー・ピックフォード嬢とともに、純情可憐リリアン・ギッシュ嬢といわれ、日本では抜群の人気だったそうな。
ライブラリを整理しつつ、そんなことを思い出してしまった秋の夜のことであった。