火星の月の下で

日記がわり。

ライネッケ作曲フルート奏鳴曲ホ短調「ウンディーネ」op167

ライネッケのフルート奏鳴曲を聴く。
フルート:ジャン・ピエール・ランパル
ピアノ:ロベール・ヴェイロン・ラクロワ。
1882年作曲、ということなので、後期ロマン派というより、もうほとんど国民楽派盛期、印象派とか前衛の前兆とかが見え始めて来た頃だけど、シューマンに師事し、ブラームスと親交を結んで、堅牢な音楽作りをしながらも、保守的な浪漫派(この言葉自体、かなり矛盾をはらんでいるんだけど)に徹していた人なので、本作もそういった浪漫派盛期の薫香が濛々と漂っている。
全4楽章の構成で、
第1楽章ホ短調ソナタ形式、Allegro、
第2楽章ロ短調スケルツォ、Allegreto vivace
第3楽章ト長調の歌謡三部形式 Andante tranquilo
第4楽章ホ短調ソナタ形式、Allegro molto agitao ed appassionato quasi Presto・・・で、全曲は長調終始する。
なんといっても前半2楽章の憂愁に沈む詩情、暗いパトスが魅力的で、後半のやや明るくなる曲想は少し軽い印象がある。
第1楽章の「ウンディーネ」のテーマは、神秘の底から現れたというよりも、暗い情念を内に抱えたモノローグのようで、実に魅力的。この第1楽章の雰囲気が全体を覆っていて、全曲にその香りが咲きこぼれる。
第2楽章は闇で鬼火が跳ね回るような、パトスの舞踊。
後半の2楽章は少し軽くなるとはいっても、雰囲気は継承している。
ただ、フケーのウンディーネの結末を思うと、やはり短調終止してほしかったかな、という思いは少しあるが。
ともかく、良い曲で、この盤にはフルート協奏曲op283、ハープ協奏曲op182がカップリングされているんだが、断然この「ウンディーネ」の方が良いね。
ロマン派の木管奏鳴曲というのはそんなに数はないんだけど、この12年後に作曲されたブラームスの2曲のクラリネット奏鳴曲とともに、記念碑的名曲といっていいのではないかと思う。