火星の月の下で

日記がわり。

クロップシュトックの劇

恩師が亡くなられたので、その名著『十八世紀ドイツ戯曲のブランクヴァース』を久しぶりにポツリポツリと読み直しているところ。
これが出た頃にはもう卒業していたと思うんだが、どういう経緯で購入したのか、ちょっとよく覚えていない。
たぶんなんかの用事で母校によった際、生協だかなんだかで購入したような気がしているんだが・・・。少なくとも一般書店ではなかったと思う。
改めて読み直してみて、昔はそこに取り上げられている作品よりも、脚韻等の方をしっかり読んでいたように思うが、今手にとって20数年ぶりくらいに拾い読みしていくと、むしろ取り上げられている作品の方に目がいってしまう。
昔読んだはずなのにすっかり失念していたこととかが懐かしく思い出されて、とりわけクロップシュトックの劇、なんてのはすっかり忘れてしまっていた。
広義の意味での浪漫派の黎明を告げる、あの1748年の『救世主』最初の三歌があまりに有名。
クロップシュトックというとシュトルム・ウント・ドランクの予言ともなるこの歌の作者、という印象があまりに強烈だったため、劇の方はまったく失念してしまっていた。
しかし今振り返ってみると、なかなか面白そうな素材を取り上げていたようで、
・『アダムの死』(1757)
・『ザーロモ』(1764)
・『ヘルマンの戦い』(1769)
・『ダーフィト』(1772)
・『ヘルマンと王公たち』(1784)
・『ヘルマンの死』(1787)
・・・等の名前が挙っている。
著者はブランクヴァースの検証として、そのうち主に『ザーロモ』を取り上げているが、素材的には『ヘルマンの戦い』に心引かれるものがある。
トイトブルクの森でローマ軍を打ち破ったゲルマンの将アルミニウス(ヘルマン)を素材とした劇、というと、クライストの『ヘルマンの戦い』(1808)やグラッベの『ヘルマンの戦争』(1838)といったあたりが思い出されるところだが、クライストの作品が現われるさらに半世紀前にこのモティーフを扱っていた、ということで、たいへん興味がある。
残念なことに、現時点ではまだ、Projekt Gutembergにはアップされていないので、適当な書を取り寄せて読んでみるしかない。
これについてはおいおい、と思っている。