火星の月の下で

日記がわり。

戯曲

浪漫派演劇の不完全燃焼

18世紀後半に起こった独逸ロマン主義(フランスでは少し遅れて19世紀前半)だが、今日作品で見ると、散文と詩が主流を占めているようになっている。 しかし英国を除く大陸側諸国では同時に理論も盛えていた。 特に独仏の両国は、それぞれ18世紀後半と19世紀…

ヴェデキント『春の目覚め』

ヴェデキント『春の目覚め』の舞台録画がいくつかweb上に上がっていたので、何本かを見た。 モティーフが社会や大人との断絶によってつぶされていくミドルティーンの少年少女たち、というものだけあって、いろいろと現代風にアレンジされてて、それなりに面…

ブレヒトのジャンヌ・ダルク三部作

ブレヒトのジャンヌ・ダルク劇三部作を、制作順に読んでいくと、どんどん史的ジャンヌに近づいていくのが面白い。・屠殺場の聖ヨハンナ(1930) これは作中にジャンヌの独逸語名「ヨハンナ」が登場するだけで、ほとんど何の関係もない話。 謁見の場のパロデ…

ティークとシュレーゲル兄の沙翁訳。

昨日の記事、船に乗り込んだ教授の側にいろいろ問題があったみたいだけど、ポイントとして現状の報告の方に興味があったし、同時的な感想という意味合いもあるので、とりあえず残しておく。さて、まだまだ続くよ、Projekt Gutenberg。 ティークとシュレーゲ…

G・ハウプトマンの童話劇3部曲

岩波文庫からヴェデキント『春のめざめ』が新訳で出ていたようなので買って帰ったんだが・・・。ちょっとひどいね、これ。口語をふんだんに取り入れていて、そこが売りにもなってるみたいなんだけど・・・。本作を児童劇と見るか表現主義の劇と見るかでだいぶ違っ…

近代劇全集の写真

ちまちまデジタル化してるんだけど、さすがにしんどいな。若い頃だったら一晩か二晩で一気にできたんだろうけど・・・。 しかし何度見ても『沈鐘』のラウテンデラインは美しいな・・・。

近代劇全集別冊、舞台写真帖

紙質がそうとう傷んできているので、そろそろデジタル化しておきたい、と考えているものの、とにかく分量がすごいので、ちまちま時間をかけてやっていこうかな、なんて考えている。たぶん著作権とかは切れているはずなので(昭和6年、1931年発行)いくつか…

日本戯曲大事典、刊行

日本戯曲大事典、刊行開始。(p://www.hakusuisha.co.jp/book/b228932.html) 興味対象が近代ドイツと羅・希の古典古代なので、本邦戯曲に関してはそれほど強い関心があるわけでもないのだが、近代日本戯曲史の観点は、泰西近代演劇との交流や影響を考える上…

素材別戯曲の楽しみ

以前、ジャンヌ・ダルク劇について少しだけ書いたけど「戯曲」の中に収まっていて、作者の個性が素材の上に綺麗に反映してて、かつ我々日本人にとってもなじみのある素材として、ジャンヌ・ダルク・モティーフはたいへんとりあげやすい。特に以下の5人によ…

雨と「風涛(Sturm und Drang)」

昨晩から穏やかな春の雨。したがって決して疾風怒濤の雨ではないのだが、最近クリンガーの劇をいくつか読んだこともあって「Sturm und Drang」について連想してしまうことが多くなってしまう。 よく知られているように、文学思潮、あるいは文学史用語の一つ…

『ザッフォオ』のメリッタ

グリルパルツァーの『ザッフォオ』を実吉訳版で読む。岩波の古い版を古書点で購入してきたもので、訳語がかなり古いせいか、昔Reclamで読んだものとはまるで別物のような錯覚に陥る。それはともかく寝っころがりながら読んでると、奴隷少女メリッタの魅力が…

『ヘンリー六世』と魔女

第三部をパラパラ拾い読みしてたんだけど『ヘンリー六世』っていう劇は、つくづく「魔女(ラ・ピュセル)に始まり魔女(王妃マーガレット)に終わる劇」なんだな、と思わせてくれる。第二部にも降霊術みたいな場面が出てくるし。よく書評とか読むと、めまぐ…

少年劇団と女性人物

シェイクスピア研究に欠かせない文献として「ヘンズロウ日誌」というのがある。(Diaryなのだが通例「日誌」と訳される)1592年から1603年までの劇団員の賃金等、金銭関係の記録をかなり詳細に残してくれていて、それによりシェイクスピアの真作・贋作はもと…

ヘンリー六世(松岡和子訳)

ちくま文庫の『ヘンリー六世(三部作)』を買ってきてパラパラ拾い読み。既に坪内訳と福田訳を持ってるけど、3部作が合本で一冊になっている便のよさを考えて、新規購入。その理由で二部作が合本になっている『ヘンリー四世』も買ってみようかと思ったが、…

アンティゴネーを読みながら

葬儀等で移動の途中、車中でソポクレースの『アンティゴネー』(岩波版)などを読む。興味を引くのは、・妹姫アンティゴネーによる「兄妹の絆」・クレオーンの変化・・・の2点。アンティゴネーの語る「兄妹の絆」が夫婦や親子のそれよりも深い、というのは親が…

悦痴な古典劇文学

悦痴、というとちょっとアレだが、艶っぽい描写というのは時とともに忘れてしまうことが多いので、素材として使えそうなものは思いつくままに記録しておこうかな、と思っただけ。 カーリダーサの『シャクンタラー姫』から。 シャクンタラー、登場の場面。シ…

沙翁を再読したい

最近とみにシェイクスピアを再読したい、という感情にとらわれてるている。劇作品は『エドワード三世』も含めて、若いときに全作品読んでいるし、BBCによってテレビドラマ化された全集も見たし、その中の7割くらいは実際に原語で芝居も見ている。だがほとん…

リリーからジョンソンまで

『ホライゾンII』を見てたら「アスリート詩人ベン・ジョンソン」とか「トマス・シェイクスピア(CV:斎藤桃子)」とかが出てきてひっくり返ってしまった。単に英国がらみで名前を借りただけで、しかもジョンソンの場合、同名の短距離選手とひっかけて、と…

カーテン座が発掘される

シェークスピア:初期作品上演の劇場跡発見 ロンドン東部 【ロンドン小倉孝保】英国の劇作家、シェークスピア(1564〜1616年)の初期作品が上演されたとみられる劇場「カーテン座」跡がロンドン東部ショアディッチでみつかった。名作「ロミオとジュリエット」…

クロップシュトックの劇

恩師が亡くなられたので、その名著『十八世紀ドイツ戯曲のブランクヴァース』を久しぶりにポツリポツリと読み直しているところ。これが出た頃にはもう卒業していたと思うんだが、どういう経緯で購入したのか、ちょっとよく覚えていない。たぶんなんかの用事…

ツァハリアス・ヴェルナーの歴史劇

夏コミ用に幻想作家のことをいろいろまとめているんだけと、どうも間に合いそうにない。(笑)そんなわけで、今後のメモのために、まだ今まで書いてなかった作家について少し。 ・アルニム。今一番興味があるのがアルニムとマイリンクなんだけど、どちらもちゃ…

グリルパルツァーの『メデア』から

ついったーで時々見かける名言ポッド。その中にグリルパルツァーのものがあって、こんなのが流れてきた。この世の幸福とは何だろう?―それは一つの影にすぎない。この世の名声とは何だろう?―それは一つの夢にすぎない これ、たぶんなんかの名言集から引っ張…

魔女劇の魔少女(一)

ついったで少し書いたので、以前に書いたことといくつかダブるけど、記録しておく。 沙翁『ヘンリー六世・第一部』を魔女劇として読むのは、木を見て森を見ずの典型に陥りそうなので、関心できることではないんだけど、それでもたいそう興味のあるモティーフ。…

ヴィルトガンス、他

近代劇全集を見ていると、今ではとんと正嫡の文学史で名前を見ることがなくなった劇作家の名前に出会うことがある。愛蘭のダンセイニ郷などは、今日妖精文学、小説、詩の方で著名だが、劇の方はかなり忘れ去られてしまっている感がある。 第一書房が出した昭…

シラー『フィエスコの反乱』

シラーの演劇は、どれをとっても劇的演劇の代表で、実に面白く名曲ぞろい。晩年の『メッシーナの花嫁』、未完に終わった『デミートリウス』、初期の傑作『たくらみと恋』なんかが特に好きなのだが、全作品中かなり影のうすい『ゲヌアにおけるフィエスコの反…

マーロウの『フォースタス博士』に想う

雷雨に起こされ、しかも適度な頭痛に見舞われていたので、鎮痛剤を飲みながら、書棚からマーロウの『フォースタス博士』を取り出して拾い読み。最初の方で、メフィストフィレスが呼び出して見せる7つの欲望、グラトニーとかプライドとかっていうのは『はが…

古典劇における恋愛成就

プラウトゥスのある劇*1を読んでて印象深いことのひとつに、すぐに子供ができてしまうことがあった。なんか恋愛成就即出産なのだ。プラウトゥスに限らず、古典喜劇、古代喜劇、ときに悲劇でさえも恋愛の成就、あるいはそもそもその過程すら描かれず、好きに…

ウィーン演劇メモ〜その五 シェーンヘル

・カルル・シェーンヘル(1867-1943) このあたりから、そろそろ20世紀。北のドイツでは表現主義が吹き荒れだす頃でもある。 ・『チロルのユダ』(1895)3幕。 ・『人形彫り』(1900)悲劇・1幕。 ・『夏至の日』(1902)3幕。 ・『行商人』(1904)1幕…

ウィーン演劇メモ(四) アンツェングルーバー

・ル−ドヴィヒ・アンツェングルーバー(1839-1889) ネストロイの最後期から、このアンツェングルーバー、そして次のシェーンヘルあたりまでが、19世紀後半のウィーン演劇。民衆劇のスタイルを継承しながらも、ライムントの魔法劇、ネストロイの毒の効いた喜…

ウィーン演劇メモ(三) ネストロイ

・ヨーハン・ネポムーク・ネストロイ(1801-1862)ネストロイについては、多作なので、代表作と目されるものに絞って書く。ネストロイ劇の特色は、徹底した喜劇、それもかなり毒のある喜劇で、社会風刺、政治批判、人間痛罵、状況喜劇、倒錯喜劇等、みな毒を…