火星の月の下で

日記がわり。

○ペストの謎

「ペスト大流行にかかる謎」(togetter:949907)より。
中世の黒死病はペストではなくウイルス出血熱(日本獣医学会人獣共通感染症(第159回))・・・という研究報告があったらしい。

彼らの結論では、黒死病ペスト菌ではなく出血熱ウイルスによるものであり、今でもアフリカの野生動物の間に眠っていて、もしもこれが現代社会に再び出現した場合には破局的な事態になりかねないと警告しています。

これは文化史的にも面白い研究報告で、もちろん研究の骨子というか目的は、現代にも通じる病因に対するものだろうけど、文化史的な目で見てみるのもたいへん興味がひかれるところ。
この文中にもあるけど、一般に中世欧州を襲った「黒死病」禍はほとんど社会文化の全てに影響を及ぼしていたが、犠牲者の歯髄から検出されたDNAの解析から、それがペストであったのかどうかは甚だ怪しいらしい。
なにより、当時の衛生状態とか医療技術を考えても、罹患したらほぼ死亡率100%なのがかなり異常だ、ということで、エボラ等の出血熱であれば説明はつくけど、ペストだと死病と言ってもそこまでむちゃくちゃ高い死亡率ではないらしい。
得体の知れない「死に至る病い」が、さながら空気のように社会の中に蔓延してくる、という恐怖は、死生観そのものにまで影響を及ぼしたものだったので、その原因についての研究というだけでも興味をひかれるところ、もちろん文化史的に、ではあるが。
しかし中世末期頃にはすでにラットによるものである、という見解が広く行き渡っていて、とある貴族の舞踏会で、ラットが出たと知られるや、紳士淑女の皆様が我先にとテーブルの上に上がって恐怖に震えていた、なんていう逸話もあったりするらしい。
ただこの研究はまだ定説というところまではいかず、数ある諸説の一つ、という域をでていないらしい。
とはいっても、甚だ興味深い研究でございますな。