火星の月の下で

日記がわり。

新版ガリア戦記

書店をなにげなく歩いていると『ガリア戦記新訳』というのがPHPから出ていて、「今週の新刊」として平台に積まれていた。
ガリア戦記』というと、近山金次訳の岩波版でずいぶん世話になったし、部分ではあるが、ラテン語学習中に、大学書林の対訳シリーズででも一部読んでいた。
というわけで、購入はしなかったものの、パラパラ店頭で読みすすめていくと、実に読みやすくなっているのがわかった。
この本の序文にも書かれているし、従来からよく言われていたことだが、簡潔にして雄渾な原文は、ラテン語学習者にとって、実に深い感銘をもたらすものだったが、さすがに岩波のそれは時代の古さもあって、お世辞にも読みやすいとは言いかねた。もちろん、悪文とかという意味ではなく、時代にそぐわなくなった、という意味であるが。
今回のこの新訳は、文章は読みやすいし、段組や解説の配置もうまくできている。まったく今の読者は幸せだ、と思わざるをえない。
周知のごとく『ガリア戦記』はタキトゥスの『ゲルマーニア』と並び、帝政時代の原始ゲルマン人について知る一級の資料である。
それゆえ、ラテン語そのものに興味はなくても、紀元前後から8世紀頃にかけての、この若々しく新時代を切り開いていった民族に関心を寄せる者であれば、みな紐解いた名著である。
それがこんな読みやすい形で出版されている、というのは喜ばしいことだと思う。
もっとも購入していないこともあり、本文は精査に見ると、はたしてどうなのか、ということはわからないので、これから書評とか専門家の意見を探してみようとは思うが、とっかかりとしては(誤訳が少ないだろう、という前提ではあるが)いいのではないか、と思ったりしているところ。