火星の月の下で

日記がわり。

東京ホイホイ

水木しげるに『惑星』という短編がある。
ページ数にしてわずか8ページの作品なのだが、これがなかなか示唆に富んでいる。
月と地球の間に突然惑星が現れる。
さっそく探検家が調査にむかうが、そこはたとえようもない快感のある星だということがわかる。
まもなく片道一億円で定期便が出るようになる。
そのたとえようもない快感はパラダイスのようだと宣伝され、次々に地上の金持ちが移住する。
主人公・貧太の会社でも、金持ちの息子課長が行ってみて、そのとんでもない快感を皆に伝え、自分も家族で移住することに決めた、という。
だが貧太の家計は苦しく、とてもそこへ移住する資金的余裕はない。
そうこうするうちに、金持ちだけでなく、周囲の中産階級まで移住することがブームになる。
地上に残された者が貧乏人だらけになる。
ところがある朝突然、この惑星が猛スピードで飛び去り、地球に貧乏をもたらしていた悪質な金持ちが消え去る、というニュースになる。
労働条件は改善され、皆ビフテキが食えるようになる。
だいたいこんなあらすじである。
まぁ、ラストは夢オチで、絶望的な貧乏はまだまだ続く、という流れなんだが、実に示唆的ではないか。
というのも、日本はヤバくても、東京はヤバくないかもというコラムを読んでいて、まさに現代の東京がこの『惑星』になってきつつあるような感覚を憶えたからだ。
戦後の東京の繁栄は日本各地、とりわけ関西からの人材の流入により形成された。
産業規模で言うと、決して突出していたわけでもない京浜地区がここまで異様に肥大してしまったことについては、いろいろと書いていくとキリがないので割愛するけど、ともかく、他地域の力を吸収することで肥大化してしまった。
だが、首都圏には大規模震災が確実にやってくるので、そのとき、東京に集められていたものが一気にスポイルしてしまう危険性はかなり大きい。
東京という快感(富の蓄積、情報等)にひきつけられた、悪質な金持ちがここで一気に壊滅する・・・、という図がなんとなく見えてくる。
阪神大震災を目の当たりに見たものとしては、神戸程度の都市でもあれだけの被害になるのだから、東京にきたら、と考えたらちょっと想像しきれない。
もちろん、主要機能が一箇所に集中してくれば、大規模テロルの可能性もあるし、それによる麻痺も多少はあるだろうけど、震災に比べたら小さいのではないか。
ただまぁ、南関東地震、理屈では確実に起こるだろうというのは理解できるけど、実感としてはそんなになかった。
東京に住んでた頃、小規模な地震はしょっちゅう体感してたので、適度にエネルギーが抜けて、そんな大規模なのは来るとしてもそんなに近い将来ではないのではないか、むしろ、この小規模なのがピタッととまったときがあぶないんじゃないかなぁ、とぼんやり思っていた。阪神大震災のだいぶ前なので、今、生活圏としての東京での体感地震がどんなものか、ちょっとわからないけど。
それと、確実に来る大地震にしても、東海寄り、つまり静岡〜神奈川が中心地で、東京は、たとえば阪神震災のときの京都や大阪程度の被害で終るのではないか、という気もしているから*1仮に来たとしても、それほどの壊滅的被害にはならないかも知れない。
しかし、そうは言っても、これだけ肥大し、そしてその勢いがとどまることを知らず、日本人口の半分を抱えるようにまでなる時、そういう時が来ると、被害の大きさなんてもう手がつけられないだろう。
しかも今のままだとそういう時は決してそれほど先のことでもなさそうだし。
私は年齢的に余命がそれほどあるわけでもないので、生きている間には東京大地震は起こらないかも知れないけど、政府、金融機関、各種研究機関のバックアップがどうなっているのか気になるところではある。金融関連は、一部は大阪にバックアップ機能があるところもあるようではあるが・・・。

*1:あくまで気がしているだけ。阪神地震と、来るべき東海・南関東地震とでは発生メカニズムが違うので、簡単に比較はできないだろうし。