火星の月の下で

日記がわり。

男の魔女、女の魔道師

アニメ『とある魔術の禁書目録』を見てて、いつもちょっとひっかかってることがあって、それは、
「科学と魔術が交差するとき、物語は始まる」といういつも予告で言ってるセリフというか、文言。
魔術、呪術って、広義の科学じゃないの?・・・というのがいつも頭をよぎってしまうのだ。
そもそもここで言う魔術は、Zauberなのか、Hexenschaftなのか、いったいどっちなんだ。
以下、アニメ、ラノベに全然関係ないことをグダグダ書いておくので、タグは一応「民俗」扱いにしておく。厳密には民俗でもないけど。(笑)
元来、非英語圏・欧州では、呪術と妖術というのはかなり厳密に区別されていて、魔術、呪術、錬金術、魔道といった類は、体系をもった科学以前の科学だった。
近代科学によってそのほとんどは否定されてしまっているけど、そこには科学につながるであろう、合理的な考えの萌芽があって、原因、結果、予測、といったものがいくつか見受けられた。
これら魔道は、知性と実験の産物であり、広く書を求め諸般の事例に通じていなければならなかったため、たいていは、地位も経済力もあり、かつ名門の男子によって研究されることが多かった。
あのニュートンだって、広義には魔道師だったわけで、その著作は同時代人には最先端の魔術書として読まれていた、という証言も多い。
対して妖術、魔女術、の類は、呪詛であり、願望であり、怨念であり、祈願であり、まさに接続法の世界である。
そこには実験も知性もなく、ただ意味の不明な聞き伝えによる呪文を祝詞のように唱え祈り、信仰する姿があった。
恋敵が突然死にますように、恋が成就しますように、突然金持ちに求婚されますように、邪魔な村長がくたばりますように。
土地ごとに変化し、体系はなく、言葉の表現の中で違う屈折、曲用を持つ特異な変化。
これは民衆の超自然願望であり、預言であり、予言であった。
当然、信仰する連中は、村社会の最下層、貧しく、力なく、醜く、病み老いていじめられる無学な女たちが中心だった。
つまり呪術、魔術は、前近代の科学であり高位の富裕な男が行うことが圧倒的に多く、妖術、魔女術は社会の底辺にいる貧しい中年女が行うことが多かった。
そのあたりを端的にあらわしているのが「Hexe→魔女」という訳語で、決して女に限定されてるものではなかったが、圧倒的に醜く年老いた下層の女が多かったからだ。したがって当然、下層の貧しく醜く不具の男なんかもいたわけだ、ごく少数だが。
また女の魔道師、錬金術師というのも、中世盛期に入るととんと聞かれなくなるが、古代末期から中世初期にはこれまたごく少数であるが、名前だけは伝わっていたりする。
ということで、男の魔女も、女の魔術師も、ごく少数だがいたことになる。訳語上の矛盾だね。
ついでに言うと英語のWitchcraftは、Hexenschaftの訳語みたいに考えられているけど、両概念を内包してしまっているので、Witchが伝統的な魔女にあたるかどうか、甚だ疑問だったりするわけだ。
「Hexe」という単語は、英語では「hag」である。今日では魔女という意味で使われることはあまりなくて、原初の意味に立ち返っている。
若さあふれる可愛い魔法少女、魔女っ娘、なんていうのは、日本と、ディズニーによって幻想を植え付けられた米国の、風俗文化だね。ちょうど、メイドが「Maid」とはまったく関係のないものになってしまっているように。
いつものようにとりとめのない文章だが、風邪で会社を休んで寝込んでいるので、まあこんな駄文でも残して頭のリフレッシュに・・・なればいいなぁ。(^_^;