火星の月の下で

日記がわり。

ウーパールーパーを食用に

ウーパールーパー、ペットから食用に 富山の養殖業者、中国へ

水生生物を養殖する日本生物教材研究センター(富山市)は、ペット向けの需要が激減しているウーパールーパー(メキシコトラフサンショウウオ)を食用として中国向けに販売する。
かつて原産国のメキシコで食べられていたことに着目し、乾燥食品として製品化した。
1980年代にテレビCMで一躍人気を集めた「アイドル」は、用途を変えてブームの再燃を目指すことになった。

一瞬「うわ、むごい」って思ったんだけど、実は爬虫類両生類業界では既にこういう動きはあったのだ。
まずウーパールーパーだが、あのCMがブームになったのって、もう四半世紀前で、あのときも「ウーパールーパー」という名前はなんとかならんのか、と思っていたが、一応今でもウーパールーパーという名前で通用しちゃうのね。
上の記事にもあるけど、正しくはメキシコトラフサンショウウオ、もしくはメキシコサラマンダーのアホロートルで、ウーパールーパーは商品名で、生物名ではない。
サンショウウオというと、日本の山椒魚は、森林の朽木の下とか、清流の川辺とかで、さながら植物のように一生ほとんど動かずじっとしている印象があるが*1、西半球に生息するグループの中には、イモリのように活発に動きまわる連中や、完全水棲の連中もいたりする。
このアホロートルは、両生類・有尾目に属する連中なので、カエルやイモリ、サンショウウオ同様、エラ呼吸の幼生時代から、原始的な肺呼吸をす成体時代へと変化するが*2、このアホロートルというのは、ネオテニー、すなわち幼形成熟で、変態することなくエラをつけたまま成熟し、繁殖する。
飼育者なら知っている有名な話だが、成育条件をいじってやると、変態してしまうこともあるので、ネオテニーがノーマルというわけではないけど、一般にはネオテニーによって殖えるサンショウウオとしても知られている。
北米には「Mud Snake」和名「ドロヘビ」といわれる、黒と赤のどぎつい蛇がいるんだが、こいつが自然下では「アンフューマ」というこれまたレアな有尾類を食う。
このアンフューマ、ほとんどウナギみたいな体系の完全水棲有尾で、一応イモリ、サンショウウオの仲間なんだが、成長して80〜90cmクラスになったヤツを飼ってると、両生類を飼っているというより、獰猛な肉食魚を飼ってるような感覚になるヤツで、一見するとでっかいウナギなんだが、あるかないかわからん程度の、退化寸前の手足があって、動きが大きいので、ペットルートなんかではけっこう人気の有る種だ。
飼育も両生類にしてはそれほど水質にもやかましくないし(もちろんちゃんと飼おうと思ったら小型カエル程度には水質に気を使うべきだけど)割と飼いやすい種なんだけと、繁殖ということになると、そのデカい図体ゆえにすこぶる難しい。つうか、個人飼育のレベルではちょっと不可能だと思う。相当大きな水槽が必要になるからね。
ところが、このドロヘビの方も、カルトな連中には人気があって、飼ってる人もいたりするわけなんだが、高価で繁殖させにくいアンフューマの幼生を餌にさせる、というのは現実問題としてできない。
そこで、このアホロートルを使うのである。(笑)
もちろん、このアホロートルだって、餌動物としてまわすには決して安価な種ではないんだが(ペットとしては安い方だけどね)アンフューマに比べたらはるかにまし、ということとで、ドロヘビ飼いの間ではわりと知られたテクニックだったのだ。
ということで、「餌にする」というのならまだしも、人間の食用にする、と聞かされると、かなり複雑な心境だ。
東北とか信州なんかのある地方では、清流のサンショウウオを春に食べる風習が残ってるところもあり、それをつかまえる竹篭なんかも民芸品みたいな形で残ってたりするので、まぁ、日本でも昔から多少はやってたりするんだけどね。(^_^;

*1:例外としてオオサンショウウオ、いわゆるハンザキがあって、和名「山椒魚」もこのオオサンショウウオに由来するが、この世界最大の有尾類はサンショウウオ属の中では例外中の例外で、一般にサンショウウオというと、20cm以下の大きさが普通で、人里はなれた湿った朽木の下でひっそりと暮らしている中小型の種である。

*2:サンショウウオのグループには、変態して肺を持たず、皮膚呼吸だけになる種もいる。