火星の月の下で

日記がわり。

2013年9月7日、奨励会三段リーグ最終局

本日、再放送だったのだが『めざせプロ棋士』第709回が早朝放送されていたので、記録も兼ねて記載しておく。
第53回三段リーグ
この期の昇段者は石井健太郎三段(当時)と三枚堂達也三段(当時)で、三枚堂三段(現四段)が一期抜けをした期でもあったわけだが、最終局でものすごいドラマが待っていた。
宮本広志三段(当時)が最終局前で9勝8敗、鈴木肇三段が9勝8敗、この両者が最終局で激突する。
既に二人とも年齢制限を超過しており、ここからは常に勝ち越し(10勝以上)しなければ強制退会となる。つまりこの対局でどちらか敗れた方が退会になる、という棋士として命がけの対局となった一局。
実はこの放送、リアル放送時は見逃していたので、ずっと再放送を心待ちにしていたのだが、ついにこの熱戦譜を真田七段の解説で視聴することができた。
真田七段自身も「命がけの対局」ということばを使っておられたが、まさにそんな戦いで、両者相振ののちガチガチの相穴熊へ。
プロ同士の対局でも降級や降級点がかかった対局などではちょくちょく見るが、この一局が最後になるかも知れない、というバックグラウンドがわかった上で見ると、もう引き込まれるなんてものじゃない。
ほとんど極限状態と言っていいであろう戦いの中で伝わってくる「負けられない」という強い想い。
真田さんの明快な解説も相俟って、そののちのこととか結果とかを十分わかっていても、目が釘付けになるすさまじい対決だったと思う。
結果は、よく知られているように宮本三段(当時)の勝ち。
そして鈴木三段は無念の退会。
しばらくのちある棋士のブログで、鈴木三段の無念の心情が語られていて、奨励会という厳しい戦場で生きる才能ある若者たちの戦いに心打たれた。
次の第54期三段リーグで、このとき首の皮一枚つながった宮本三段が晴れて四段に昇段し、昨年度から順位戦C級2組に参加、というその後の昇段という結果ともあわせて、おそらく奨励会史上に残る名勝負、激闘だったのではなかろうかと思う。
『めざせプロ棋士』はこういう劇的な勝負が至る所にあって、残念なことにその後プロ棋士になれなかった人の対局もたくさんあるが、心引かれる番組になっていると思う。