火星の月の下で

日記がわり。

die Kunstmaerchen

メルヘン、ではなく、芸術メルヒェンとして、あるいは創作メルヒェンとして好きなものを列挙してみる。
昔は骨の髄までホフマン・マニアだったので、ベスト10とかベスト20とかを選ぶと、半数から時に2/3くらいまでホフマンばっかりになってしまったけど、最近はけっこう落ち着いて読めるようになってきたと思う。
ベスト、というよりも、現時点での好み、いろいろ。
1.『星のひとみ』(トペリウス)
最近はまず最初に挙げるのがこれ。今日的な読み方だと、テレパシー、とかってことになってしまうのかもしれないけど、雪国の不思議な少女の話として読むと、一級のメルヒェンだと思う。
作者トペリウスは、フィンランド人だが、スウェーデン語の人。フィンランドでは、人口の1/5くらいまでがスウェーデン語の話者。
死ぬまでに、一篇でいいから、こんなメルヒェンを書いてみたいものだ。
2.『氷姫』(アンデルセン
初読時の感動は今も覚えている。人にあらざる者が、人にあらざる力をもって、人に関わろうとし、そしてその結末を死をもって成就する。
私のジンガイ好みのスタートとなった作品でもある。
3.『蚤の親方』(ホフマン)
幻想小説としてあげるのなら、『ファルンの鉱山』や『ザントマン』の方がはるかに好きだし、メルヒェン小説としても、『黄金宝壷』や『ブラムビルラ姫』の方が完成度は高いと思うけど、メルヒェンの好みという点ではこれ。
4.『モモ』(エンデ)
実は大学時代に恩師に勧められて、翻訳が出るよりもかなり前に読んだ。この時点で『ジムボタン』の作者、という認識しかなかったけど、初読して、すっかりとりこになってしまった。その後、『終わりの無い物語』*1、『ゴッゴローリ』『鏡の中の鏡』と名作群が次々と出てきたけど、いまでもこの人の最高傑作は本作だと思っている。
5.『石さまざま』(シュティフター
これを芸術メルヒェンというのは、ちょっと違うかもしれないけど、受けるインパクトはまさに優れたメルヒェン小説のそれだと思う。
この中の一篇『水晶』は単独作品として人気もあるし、優れた作品だと思うけど、『石灰石』のムードも大好き。
6.『ザイスの学徒』(ノヴァーリス
詩の結晶とも言うべき『青い花』でもいいんだけど、どっちかというと、こっちの方が好きです。
正確に言うと、この中に含まれる『バラとヒヤシンスのメルヒェン』なんですけどね。
7.『ルーネンベルク』(ティーク)幻想と怪奇に満ちたメルヒェンというと、ティークの初期作品でしょう。『金髪のエックベルト』はあまりに有名なので、今回はあえてこっち。
もちろん、エックベルトも一級のメルヒェン小説。
8.『沈鐘』(ハウプトマン)
メルヒェン劇、としてしまっていいのか疑問だけど、素材と舞台設定はそういってもいいと思う。
ラウテンデラインは氷姫の次に好きな、妖精少女。
9.『森は生きている』(マルシャーク)
子供用にリライトされたものを幼年期に読んで、たいそう感銘を受けたのだけど、後年、ちゃんとしたものを読み直して、少し失望した。(笑) 
そうはいっても、好きな作品であることは確かなので、あげておきます。
10.『冠の花嫁』(ストリンドベルク)
『白鳥姫』もあるけど、人生の深い断面を見せてくれる、という点で、こっちをあげておきます。メルヒェン劇。
自然主義の巨人ストリンドベルクですが、こういう優れた仕事も残しています。彼の本質は実はこっちだった、とさえ思えてる良作です。
まぁ、今思い出す限り、サラッと書いてみた。なんか忘れているのもあるような気もするけど、こういう勢いで書いてしまったものを記録しておくのもいいだろう。その時の印象の深さ、として。
上にも少し書いてるけど、時間がたてば、『青い花』や『沼の王の娘』(アンデルセン)、『金髪のエックベルト』『ブラムビルラ姫』に変わっているかもしれない。シュトルムのメルヒェンや、ライムントの妖精劇*2プロイスラーの『クラバート』なんかも挙げたかった。
まぁ、言ってるときりがないのでこの辺で。

*1:映画化タイトルとしてはネバーエンディングストーリィという、なんか安っぽい英語題名にされてしまって、かなりしょげた記憶がある。

*2:『アルプス王』と『浪費家』は、妖精劇の最高傑作だと思う。