火星の月の下で

日記がわり。

妖精小説翻訳の今

現在の学校教育の外国語履修事情を反映してか、英米語からの妖精小説の翻訳はそこそこあるのだけれど、英米語圏以外の翻訳が、なかなか手にとりにくい状況にあるように思う。
断っておきたいが、まず英米語以外の妖精小説、妖精文学の翻訳点数が決して少ないわけではない。多いとも言いかねるけど、各国語人口と、泰西での妖精小説嗜好の国情なんかを考えると、まぁ、点数の比率はこんなものかな、と思う。
問題は、なかなか手にとりやすい形で流布していない、と感ずること。
つまり、露、独、北欧諸国といった、英米以外で妖精文学が芳醇な土地で生まれた作品群というのは、検索かけて探してみると、かなりの点数が入ってきてはいるのだが、ほとんどが「純文学」「大作家の全集の一部」「文学資料」といった形で、たとえばラノベやポケットミステリなんかを読むようには利用できない、ということだ。
もちろん、妖精小説がラノベのように普及してほしいと思っているわけでもないし、需要もないだろうから、そこまでの形は求めないにしても、英米の妖精小説翻訳本を手に取れる程度の至便さが、英米語以外の翻訳ででも欲しい、と思っているのだ。
これには心の中で、英国はまだしも、米国は妖精小説の本場じゃないだろ、って言う気持ちが常にこびりついているからで、英国にしても、現代に残存するケルト文化の残滓地域と接しているから、という程度にすぎないのであって、露独北欧におけるこのジャンルの豊かさには遠く及ばないのに、という気持ちも少しある。
児童文学を除けば、文庫で手に取れる数など、英米以外はほんのわずかである、という思いが、英米の翻訳文庫本を見たときに感じてしまうのだ。
翻訳者の絶対数が不足しているとも思わないし、原作の絶対量が不足しているとも思わない。それだけにね。
この件については、流通の事情とか需要の問題とか、情報量の不足とかもあるから、簡単ではないだろうけど、ちょっと思ったことを記録しておく。