火星の月の下で

日記がわり。

「あ、負けました」

「犬が人をかんでもニュースにならないが、人が犬をかんだらニュースになる」とはよく言われる言い回しだが、羽生みたいな強者だと、タイトル戦のような大勝負以外で負けたらちょっと目をひく。
NHK杯3回戦。羽生三冠−深浦八段。
しかもこれ、羽生の先手である。
解説で中川七段も言ってたが、時間の長い将棋、早指、関係なく強い羽生で、NHK杯でも既に優勝6度。
対する深浦は低段時代から抜群の勝率で、史上唯一の順位戦9勝1敗の頭ハネ2回とか、8割勝っても年度勝率1位をとれなかったことがあるとか、とにかく上位に来てもすごい勝率なのに、なぜか不運だったときの方がクローズアップされる棋士
普通これだけの勝率を上げてればタイトルの一つもとってるはずなんだが、取れているのは準タイトルといっていい、朝日オープンだけ。すごい勝率なのに、意外といいところで負けることが多かったが、ここ一番に弱いということではなく、どうも運の良くない強者、という印象があった。
だが、対戦成績では、10勝14敗と、羽生をそれほど苦手にしていない。
勝負自体も、かなり珍しい羽生の石田流三軒飛車。対する深浦が高美濃。
お互いの飛角が相手をにらんでてほとんど身動きがとれず、戦いはもっぱら右辺の玉頭戦。
中川七段の的確でわかりやすく、かつ緊迫感を伝えてくれる解説と相俟ってすこぶる面白かった。
羽生が負けたから、というのではないが、面白さでは今期一番の名勝負だったようにさえ思えてしまった。あ、窪田五段の対丸山戦があったか。(^_^;
でもさすがにA級棋士同士ががっぷり4つに組んだら面白い将棋になる。それも序盤で深浦がポイントをかせぎ、それを追う羽生が苦しい中から、一度追いついたように見えてからの、深浦の歩のたたきと的確な受け。終盤の入り口付近まで、歩しか交換せず、盤上の駒が両者とも実に有機的にからみあってるのも面白かった。
プロ筋の見方だと、いくつかミスや誤算もあったのだろうけど、素人目には、緊迫感に満ちた、すこぶるつきの名勝負だった。両対局者、すばらしい戦いをどうもありがとう、という気持ちだ。