火星の月の下で

日記がわり。

ウィーン演劇メモ(四) アンツェングルーバー

・ル−ドヴィヒ・アンツェングルーバー(1839-1889)
ネストロイの最後期から、このアンツェングルーバー、そして次のシェーンヘルあたりまでが、19世紀後半のウィーン演劇。
民衆劇のスタイルを継承しながらも、ライムントの魔法劇、ネストロイの毒の効いた喜劇とはまったく違う、自然主義的手法による農民劇を得意とした。
19世紀後半の欧州は散文、ことに小説が地位を確立した時代なので、戯曲はかなり後退したけれど、エスライヒでは民衆劇の伝統が着々と受け継がれていった。
ただ当時の欧州事情もあってか、このあたりになってくると、Reclamで取り上げられている本数もだいぶ減ってくる。
ワタクシの使っているReclamのガイドが少し古いこともあるけど、今それを見ていると、刊行されているのは『偽誓農夫』(1871)『良心の呵責』(1874)『第4の戒律』(1878)の3本くらいで、ワタクシ自身、読んでない、あるいは上演を見ていない作品の方が多い。
そんなわけで、将来読みたいな、という願望も込めて、代表作と言われているものを羅列的にあげておくにとどめる。
なお、このうち邦訳されたものとしては、戦前、世界戯曲全集に納められた『キルヒフェルトの牧師』(1870)くらいしか知らない。
・『キルヒフェルトの牧師』(1870)4幕の農民劇。
分類上は喜劇なのかも知れないけど、まさに民衆劇といった味わい。
凡庸な「明るい」牧師と、旧時代の象徴たる「暗い」伯爵との対比。
・『偽誓農夫』(1871)
・『エルフリーデ』(1873)
・『高利貸の娘』(1873)
・『良心の呵責』(1874)
・『手と心』(1874)
・『第4の戒律』(1878)4幕。最後期の作。
本作を代表作にしている文献もあるし、レクラムでもそんな解説があった。
まぁ、ウィーン演劇に興味があれば、必読、必見の芝居のひとつ、とは言えるかな。
名前を挙げただけだけど、読んでいない作品が多すぎるので、漏れた中にも傑作があるかも知れない。
小説なんかも数多くものしているし、死ぬまでにどれくらい読めるかわからんが、もっと読んでいきたいとは思っている。
ただ、ワタクシの趣味性からはかなり離れる作家ではあるんだけどね。