火星の月の下で

日記がわり。

ウィーン演劇メモ〜その五 シェーンヘル

・カルル・シェーンヘル(1867-1943)
このあたりから、そろそろ20世紀。北のドイツでは表現主義が吹き荒れだす頃でもある。
・『チロルのユダ』(1895)3幕。
・『人形彫り』(1900)悲劇・1幕。
・『夏至の日』(1902)3幕。
・『行商人』(1904)1幕。
・『土』(1907)喜劇・3幕。
レクラム文庫所載。『Erde』。人生喜劇。
本作と『女悪魔』が代表作とされることが多いように思う。
・『王様の国』(1908)童話劇・3幕。
・『信仰と故郷』(1910)悲劇3幕。
戦前に、新関良三の名訳がある。
・『女悪魔』(1914)5幕。
1966年に映画化もされている、シェーンヘルの代表傑作。だが、映画の方は見ていない。
・『困苦の土民』(1915)歴史劇・3幕。
・『スイトネル家の女房』(1916)5幕。
・『人生疾人の踊り』(1918)3幕。
・『子供の悲劇』(1919)3幕。
・『戦』(1920)3幕。
・『五月の踊り』(1922)3幕。
・『あれ』(1923)5幕。
・『1919年の食料封鎖』(1925)3幕。
・『月桂樹の冠』(1927)喜劇・3幕。
等々。
チロル生まれで、ウィーン以外にも活躍の拠点を持っていたシェーンヘルをここであげるのは適切ではないかも知れないが、ウィーンに最大の拠点があったし、はずしてしまうのももったいないので取り上げておく。
アンツェングルーバー以上に、農民劇、土民劇を得意とし、ほとんどの舞台は彼の故郷、チロルの山間部。
人生の苦悶、相克なんかを真正面から描き、苦く、堅苦しく、叙情性とはほど遠い、ウィーン演劇としてはかなり異質の作家である。
だが、ドラマ技術は間違いなく進歩しており、舞台の上にロマンスや夢想が花咲くことも少ないし、悲恋や英雄的行為、ファンタジーなども目に付くこともあまりないというのに、登場人物や、起こる事件にぐいぐいひきこまれていく作風。
テーマも、けっこう暗く重いものが多いのに、ドラマ自体は雄渾であるものが多いと思う。
語法がかなり独特なので、レーゼドラマとしてはけっこう読みにくいけど、舞台上ではひきつけられるものが多く、その意味では演劇らしい演劇だと思う。もっとも、劇作品以外にも良い作品を残してはいるが。
代表作としては、上にも挙げたように『信仰と故郷』『土』『女悪魔』で、この3本で概要はわかると思うけど、どれも個性的なプロットを持っているので、3本ではおさまりきらないと思う。
ただし、ワタクシ自身も、台本として読んだものはこの3本だけで、あとは上演で見たものばかり。したがって、少し感覚が今とは違っているかも知れないが・・・。
それと、シェーンヘルは、手塚治虫よろしく、けっこう後で自分の作品に加筆修正することが多かったので、初出年代は文献によってまちまちである。
独・Wikipediaに記載されている初出年とかなり違っているものもあるけど、まぁ、手持ちの資料の方から抜き出した、ということなので、だいたいの参考程度に。