火星の月の下で

日記がわり。

全勝昇級規定

今期冒頭、引退の決まっていた有吉九段が予想外の健闘を見せ、将棋連盟の引退規定が少し変化した。
詳細は既に書いたので省くが、連盟の昇級、降級、引退規定などは、たぶんこの先あるかどうかわからないことまで規定があって、見ているとなかなか面白い。
今年の奨励会上期で、めでたく四段となった井上慶太八段門下の船江新四段が、昇段決定の時、
師匠と順位戦で戦うのが目標だ
・・・と語って、井上門下の一門、師弟の結びつきの強さ、信頼関係が垣間見えて、少し胸が熱くなった。
これなども、連盟の順位戦規定をしっかり知っていないとわからないことで、順位戦では兄弟弟子、師弟関係の対局規定は他棋戦とは異なり、細かく制限されている。
総当たりのA級、B級1組では対局順くらいだが、総当たりではないB級2組以下では「師弟対局は組まれない」という規定がある。
つまり、船江四段は、自身が早くB級1組以上へ昇段できるようがんばりたい、という抱負とともに、師匠たる井上八段に、どうか自分が行くまで落ちないようにがんばってほしい、という願いが込められていたわけだ。
井上八段の年齢を考えると、正直かなり厳しい注文だと思うが、船江四段の師匠への想いが垣間見られる、いい談話だったと思う。
そしてもうひとつ、全勝規定。
順位戦では相星の場合、順位の上の者が昇段するが、この順位の関係で届かなくても、全勝すれば昇段できる、という規定がある。
この規定が適用されたことは、過去にまだない。
全勝昇級した棋士は、昨年の豊島五段を始め、過去に何人もいるが、全勝したが昇級規定に届かず、という棋士は過去にいない。
総当たりのA級、B級1組では、2人以上の全勝棋士は生まれないが、B級2組以下では、数字的な可能性としては、ある。
つまり、昇級人数たるB級2組の2人、C級1組の2人、C級2組の3人、そのすべてが全勝で、しかもそれ以上に、さらに1人全勝がいる、という状況。
現在、B級2組が24人、C級1組が23人、C級2組が42人。(今年、第69期時点)
数字的な可能性はあるかもしれないが・・・さすがに無理だろう。
将来この規定が活用されるような状況があるとしたら、C級2組が60人とかC級1組が40人とか、それくらいの規模になっていないと無理ではないか。
ただ、そういう可能性に想いを巡らせる、というのは、ファンとしては楽しいものだ。
たぶんワタクシの生きている間にそんなケースを見ることはないだろうが、「もしかしたら」と思わせる、夢を感じる規定だと思う。