火星の月の下で

日記がわり。

悲劇第一部・牢獄の場

まどか☆マギカ』第11話、最終話を見てから、またぞろ『ファウスト・悲劇第一部』を引っ張り出してきて、いろいろ拾い読みをしていたりする。
そんな中で気になった、最後の場面、グレートヒェンの牢獄の場面。
ファウストとの恋によって生まれた我が子を殺した罰で、牢獄につながれ、処刑の日を待つマルガレーテ(グレートヒェン)のもとに、ファウストメフィストーフェレスを伴っていく場面である。
牢獄からグレートヒェンの歌う、ドイツ古謡「杜松の木」が聞こえる。

Meine Mutter, die Hur
Die mich umgebracht hat!
Mein Vater, der Schelm
Der mich gessen hat!
Mein Schwesterlein klein
Hub auf die Bein
An einem kühlen Ort;
Da ward ich ein schönes Waldvögelein;
Fliege fort, fliege fort!

わたしの母さん、浮気者
わたしの命を取りました。
私の父さん、悪者で、
わたしの肉を食べました。
わたしの小さな妹は
わたしの骨を拾い上げ、
涼しい場所へ埋めました。
綺麗な森の鳥になり、
わたしゃ飛んでく、飛んでいく。(成瀬無極氏の訳文による)
グリムの収録によって知られるこの古謡は、もとはティークの友人であったオットー・ルンゲによって収集された低地ドイツ地方(北独)の古謡で、それをゲーテがこの牢獄の場に採用したものである。
この牢獄の場では、既にグレートヒェンは狂気にとらわれており、やってきたファウストを識別できず、死刑執行の首切り役人と思い、おびえる。
いろいろと暗示的な場面であるが、直接の言及があったわけではないものの、あの終局の場面をいろいろと連想させてくれる。
なお、第一連の「die Hur」は、「浮気者」と訳されているが、「die Hure」の韻律をそろえたもので、本来は娼婦の意味。