火星の月の下で

日記がわり。

◎グレートヒェン悲劇と、まどか☆マギカ

第1話から既に『ファウスト』的素材がちりばめられていた『まどか☆マギカ
第6話の「ヴァルプルギスの夜」、第8話の「魔女の九九」でモティーフの出所がなされてきたので、ほんの少しばかり、その辺で。なお、昨日の魔女の九九はこの辺で。
街道の場面
ファウスト:美しいお嬢さん、お差し支えなければ
わたしの腕をお貸しして家へお送りいたしましょう
マルガレーテ:わたくし、令嬢でもありませんし、美しくもありません。
送ってくださらなくても自分で帰れます。
・・・・・・
メフィストーフェレス:いや、実に無邪気な子で
懺悔をしにいって、懺悔をする種がないときている。
ああいうのには施す策がありませんな。
ファウスト:十四は越しているだろう。
30年若返ったファウストがマルガレーテ(グレートヒェン)と出会う場面、そしてその後でメフィストーに「あの娘をなんとかしたい」と語ったときのセリフ。
ファウストがマルガレーテに呼びかけた言葉「Fräulein」は、当時は貴族の令嬢をさすことばで、それゆえマルガレーテは「貴族のお嬢さん(令嬢)なんかじゃありません」はぴしゃっと決めつけて返したのである。
現在では女給に呼びかけることばにまで堕してしまっているが、古くはそういう単語で、一般の市民階級には「Jungfrau」「Jungfer」「Mamsell」等と呼ばれた。「Mamsell」は「仏mademoisell」の縮小形。
さて、その後の、ファウストメフィストの算段。
この段階ではまだマルガレーテの内面の美しさに触れてはいないファウストが、メフィストーに、なんとかしてあの娘をものにしたい、と相談する。
そしてマルガレーテは14を越している、という描写がなされる。
これにも事情があって、当時は14歳が結婚可能年齢だったためであるが、ここから出会った頃のグレートヒェンが14〜15歳ではないか、という推測も可能になる。
このあたり、女子中学生年齢に近い、というのが暗示的でもある。
ファウストとグレートヒェンの関係が進行し、筋がいろいろと展開して、後半、夜の場。
グレートヒェンの兄が現れ、ファストとメフィストーと諍いになり、殺される。
臨終の間際、妹グレートヒェンの罪をなじりながら死ぬ軍人の兄。グレートヒェンはどんどん追い詰められていく。
ヴァルプルギスの夜、というのは、こういった場面の後に出てくるのだ。
グレートヒェンの不安をよそに、ファウストメフィストーは、魔女のバカ騒ぎの夜宴に出かけていってしまう。
そしてグレートヒェンはファウストの子を孕み、その嬰児を溺死させ、牢獄につながれる、というのが、悲劇第一部の骨格をなすグレートヒェン悲劇である。
まどか☆マギカ』での「ヴァルプルギスの夜」がどういう状況で描かれるのか、どういう陰惨な影がついてくるのか、今から楽しみ。