火星の月の下で

日記がわり。

◎『イタリアの惨劇』翻訳版

たいていの幻想文学史に登場するラドクリフの『The Italian』・・・日本語訳では長らく『イタリアの惨劇』というタイトルだったが、直訳すれば『イタリア人』。
大昔ゴシック叢書の原文で読んだけど、はたして邦訳はどの程度出てるんだろ、と思い(直訳ではない題名が伝わっているので、邦訳は普通に出ていると思っていた)調べてみたんだが、どうも現在絶版、もしくは入手困難らしい。
独仏露の幻想小説怪奇小説と違い、英語作品は翻訳には恵まれているだろう、と思ってたのだけど、そういうわけでもないのね。
シラーの『Geisterseher』を頂点にして、ロマン派の秘密結社小説が百花繚乱の時期に書かれたこの小説は、「偶然」と「驚異」*1に導かれるロマンス色の濃い秘密結社小説なのだが、今日の視点では「偶然」と「驚異」が「唐突」に見えてしまうのかもしれない。
だが秘密結社小説は、今後物語文学の大きな研究テーマになってくるような気がする。

*1:ここで言う「驚異」とは文芸用語としての「驚異」である。