火星の月の下で

日記がわり。

ペルッツ『第三の魔弾』が白水社から

気付くのにかなり遅れてしまったが、かつて世界幻想文学大系で故・前川道介先生の翻訳で出ていた『第三の魔弾』(レオ・ペルッツ)が、白水社から安価になって復活しているようだ。
一瞬前川先生以外の誰かの新訳なのだろうか、と思ったが、前川先生の訳業が使われているのでリバイバルということなのだろう、めでたい。
現物は書店で見ただけで購入はしていないのだが(幻想文学大系の方を既に所有しているので)たぶんまったく同一のものだと思われる。
幻想文学大系(国書刊行会)の方は、ハードカバーで体裁がかなり凝っているのでものすごく読みづらかったんだが、こっちは書店で触ってみた感じだとソフトカバーが心地良くて、かなり読みやすそう。
前川御大の訳文は正確にしてかつこなれているのですこぶる読みやすいのだけど、国書刊行会のいささか凝り過ぎな本造りはちょっと閉口することもあったので、こういう形でのリバイバルはたいへん嬉しいし、普及に役立ってくれるのではないかと思う。
今更書くまでもないけど、二十世紀幻想文学の主流は、前半のドイツから中盤にかけて南米の方に移っていってしまった。
だが世紀前半、表現主義の劫火の中から立ち上がった近代第三の波とも言うべき幻文潮流において、マイリンクやエーヴェルスとともに散文の巨人としてのペルッツの偉大さはこれを機に本邦でも認識されていくのではないか、と思う。
もちろん、大系から『第三の魔弾』が登場して以降、他の優れた翻訳家の方々の業績によってペルッツの他作品の訳業も進んでいたが、やはり前川先生のこの傑作の翻訳のリバイバルというのは、また違う大きな意味がある。価格もかなり安くなっていたしね。
散文はいい感じで進んで来つつあるので、次は幻想演劇、韻文の方も紹介されると嬉しい。
だが私の残り時間を考えると翻訳を待っていてもかないそうにないから、自分で原書を読んでいくしかないのだろう。
もちろんそれはそれで楽しみであるのだが。(^_^)