火星の月の下で

日記がわり。

ひとひらに見る学校描写

まだ未見のものとか、関西で放映予定がたってないものとかいくつかあるけど、4月期アニメがだいたい出揃った。
細かいことはアニメブログでやってるので、気に入った点を追加的に少し残しておく。
今期作品では、ジーグ、グレンラガン、ダーカーザン、瀬戸の花嫁、そしてひとひら、ってあたりがお気に入り状態なんだけど、とりわけ『ひとひら』。
人物とかものがたりの進め方とか、いろいろ長所は感じるんだけど、小道具というか、設定としての学校描写がすばらしくて、そういう美術、設定場面にも目を奪われているところ。
この作品は2つの演劇サークルとそれに所属するキャラクターの人間模様なんだけど、第1話でいきなり演劇のシーンが出てくる。
これがちゃんと舞台をやっているのである。つまり舞台上に上手、下手があって、その上を自在に動く演者、幕と採光のタイミング、学生っぽくちょっと性急だったりずれてたりする見せ方に少し舌を巻いた。
演劇というのは、学園モノの定番で、文化祭とかのクライマックスのようなところで使われていることが多く、最近だと去年の『おとボク』とかでもあった。
ハルヒ』の影響で、クライマックスを演劇ではなくライブに切り換える作品もでてきたようだけど、やはり依然としてお芝居をシリーズ全体の肝に置いてるところは多い。
だが、学園モノアニメでやるお芝居って、たいてい「立ちセリフ、立ち舞台」で終始している。
そこでは演劇の完成度とか芸術性(・・・と少なくとも、登場人物たちが感じている芸術性)なんてものはほとんど希求されず、中心人物の結束の象徴だったり、上演に対して乗り越えていくさまざまなドラマの要素としての方に比重があった。
けっこう舞台シーンとしてうまく作られているように思った『スト・パニ』においてさえそうだったように思う。基本的に、舞台の上で歩き回ってしゃべるだけなのだ。
ひとひら』第1話では、ほんの短い時間ではあったけど、そうではなくて、舞台の上での動きがセリフに依存したものではなく、空間としての動きを演出しようとして見せており、これってある程度習熟してきた学生演劇なんかではよくある手法だと思う。*1
現場を離れて20年以上経つので、今はひょっとしたら違うかもしれないけど、あの舞台での動きは、経験者として引かれるものがあった。
もっとも、今後舞台上のシーンが増えてくるだろうから、そうなると演技者の心理とか動揺とかを描写するため、どうしても今までの演劇を取り扱った作品と似たような「立ちセリフ、立ち舞台」になってしまうことは相当予想されるけど、そうではないこともやれる、っていうのを見せてくれた意義は大きかったと思う。
さて、第2話では主人公の性格やら能力やらが描かれ、2つの演劇サークルの確執とかもあって、すごく面白かったんだけど、ここでも、学校内の様子、周辺の風景が実によくできていて、この学校の校舎から漂ってくる雰囲気をよく伝えていたと思う。
舞台となる廊下の採光が適度に暗いのだ。
木造校舎の中を少し暗めにして、古さと同時に伝統校らしい雰囲気を伝える、っていうのはよくある手法で、現行だと『ロケットガール』で主人公が通っている学校の廊下、階段なんかもそういう描写になっていた。*2
ひとひら』が決定的に違うのは、教室での採光量と廊下、狭い部室と大きな部室との採光量の差で、ちょっと気づきにくいけど、あの微妙な差がうまく出していたことなのだ。
この効果って、どっちかっていうと、地方都市なんかの伝統校、そう、例えば藩校以来の伝統があって、少なくとも戦前くらいには卒業生を出しているような、そういう地方の伝統校のイメージを伝えてくれる。
ただ、芸術系なんで、そういうイメージの方向性が正しいか、といわれると、少し首は傾げてしまうけど、ある雰囲気はよく伝えてくれていると感じたわけだ。
それと、窓から見える橋。
モデル地があるのかどうか知らないけど、あれも地方都市の伝統校の印象を強めてくれる。そういう学校描写、これは舞台ほど独特でもなく、過去にこういった優秀な描写がないわけでもなかったけど、実にいいムードを演出してくれているように感じたわけだ。
・・・と、いろいろ書いてはみたけど、なにせ原作を読んでないので、ひょっとしたら、全然見当はずれなことを書いてるかもしれない気がしたので、この辺でやめておこう。
まぁとりあえず、アニメ「だけ」を見ての印象としては、学校という舞台装置が実にうまく描かれているなぁ、と感じている、くらいは書いておいてもいいかな。

*1:まぁ、もっと習熟してくると、政治的思想的メッセージなんかが入ってきて、一般の鑑賞からははずれてしまうわけだけどね。だいたい学生演劇とセミプロ演劇の境目がそのへんだと思う。商業演劇になると、またかなり違ってはくるけど。

*2:ロケットガール』の場合、「ネリス女学院」という名前が使われていたので、ひょっとしたらモデル名と予想される「フェリス」を取材して作っているのかもしれないけど。当然のことながら女子高なので、内部はどうなってるか知りません。