火星の月の下で

日記がわり。

理系文系

まずこの記事。
理系高3の数学力、30年前よりアップ・・・だそうである。
どのランクの高校で、どの程度の問題で、という詳細がわからないので、この記事だけからの判断だけど、それって、上と下が開いている、っていうことなんじゃないかなぁ、と思った。
この度府知事を出した大阪府立北野高校を擁する大阪公立高校第1学区。
学区内最多の高校数を擁するこの学区、当然のように、大阪最古の伝統校でもある北野高校のランクは高く、公立高校で限定すれば大阪だけでなく、近畿トップランク、たぶん全国でも5本の指には入ると思う。*1
この第1学区には北野の下にも、豊中、池田、箕面とけっこうなレベルの高校が続き、進学地区ではあるのだが、下を見やれば、これまた別の意味でけっこうな高校群が存在する。さしさわりがあるとまずいので、具体的に校名は伏せるが。
大阪に住んでいた頃、この底辺高校の近くのマンションにいたこともあって、その実態は我が目を疑う衝撃の連続だった。
その実態を書くのが今回の目的ではないので割愛するが、要するに、大学区、中学区とかだと、上が高くなればなるほど、下も際限なく低くなる、ということだ。
まぁ、大阪は公立競合学区をひいてはいても、ちょっと特殊な地区を抱えている学区もあって、上がそれほど高くなくても、底辺がこの第1学区なみに低い学区もないわけではないが、そういう特殊な学区を除くと、だいたいこういう傾向になると思う。
これが田舎の方の競合学区になると学校数が少ないこともあって、そういう受験不適合層が進学しなかったり、実業系の高校に流れたりするが*2、そこそこ人口のある地域だと如実に出る。
山が高いほど、谷は鋭く深いのだ。
われわれが受験生だった昭和40年代、いまほど文系理系の数的差はまだなかった。
もちろん、既に文系の方が多数派ではあったけど、今ほどの開きはなかった。
新制開始当時だと、ほぼ同数だった、とも聞いている。
なんでこんなに文系が増えてしまったのか、というと、たぶん最大の原因は大学の数が増えすぎたことにあるんだろうけど、入試科目の偏りもこれに拍車をかけているように思う。
つまり、私大文系に数学不要の悪習が広まったからだと思う。
「数学が苦手だったので文系なんですわ」・・・このセリフは、けっこう聞く。
特に30代、40代の若い世代の、経、文学部出身者なんかと話をしていると、こういうことを言う人が多い。
ちょっと待ってくれ、と言いたい。
文系に数学が不要、なんてことはない。
数学の扱いが、理工系とかなり違うだけで、文系と言えども数学は必須学問なのである。
「数学が苦手で」というのはまだ良いとして「数学ができなくて」となると、これは文系ではなくて、非・理系なだけである。
非・理系は文系と同じではない。
同様にして、語学が苦手な理系、というのも、たまに聞く。
自称文系の数学嫌いほどではないのは、たぶん理系の場合、入試科目から外国語がはずされたことがなかったからだろう。
しかし、同様に、理系においても語学や文献学は必須である。これもまた、文系とその扱いが大きく違うだけで、これがないのは単なる非・文系である・・・・と言いたいところだが、非・理系ほどは多くはないだろう。
世の中、進路の志向性を文系、理系に2大別としてしまったことから起こった誤解だと思うけど、入試に数学がないところはあっても、英語がないところはない。*3
というわけで、非・文系はそれほど多くはならなかったけど、非・理系はどんどん増えてしまった、ということではないかと思う。
その結果どうなったか。
数学をそれほど苦にしない層だけが受験上位に来てしまう、必然的に、理系上位が山の層になってしまったのではないか、と思うのだ。
これに関して、理系出身者の社会の受け皿がまだまだ小さいことや、理科教育の不手際なんかの指摘から、まだまだ理系への理解、あるいは国際水準が低い、と嘆くむきもあり、いちいちもっともなことではあるが、受験ピラミッドで見た場合、理系に限定してしまうと、妥当な数字は取れないんじゃないかなぁ、と思ってしまったのである。
元記事には、数C、数3からの出題になっている、というのもかなりひっかかるところなんだが、このあたりは問題を見てないのでなんとも言えないかなぁ。。。
あと、30年前ではなく、最難関だった、40年から45年前あたりと比べてほしいんだけど、これくらいになると、比較資料がないんだろうね、たぶん。

*1:高校のランクを東大合格者数で計る悪弊があるが、私学はまだしも、公立高校ではあまりそれは有力なデータにはならない。けっこういろんな地区で教育関係者としてトップ公立高校を見てきた感想である。

*2:一応弁解しとくけど、田舎の場合、実業系に進むのは必ずしも底辺層だけではない。さすがにトップランクが行くことはないと思うけど、真ん中より上のかなりそこそこのランクでも家の事情とか、経済的理由とかで進学するケースは多い。したがって、都会の工業系、商業系を見るような目では見てはいけない、と注釈を入れておく。

*3:これも正確に言うと、ないわけではないけど、まぁ、推薦入試とか、体育、芸術系とかっていうのは、今回の主眼からはずれているので、考えないことにする。