火星の月の下で

日記がわり。

ライムントの妖精劇(二)

ウィーン演劇メモその2
・フェルディナント・ライムント(1790-1836)
概説は既に(一)で書いたので、そのオリジナル脚本。(・・・オリジナルといってもタネ本はあるのだが)
・『魔法島の晴雨計職人』(1823)
邦題名『晴雨計職人 魔法の島へ行く』歌と踊りつき魔法笑劇。童話『トゥトゥ王子』のパロディとして、という副題がある。
アインジーデルン『長い鼻の王女』による。
・『精霊王のダイヤモンド』(1824)
二幕の魔法劇。『千夜一夜物語』より『ゼイン・アラスナム王子と妖精王』をタネ本とする。
・『妖精界から来た少女』(1826)
邦訳題名『妖精界の娘 あるいは 百万長者になった百姓』歌付きのロマンティックなオリジナル魔法メルヒェン。
本作以降、サブタイに「オリジナル」の表記をするようになる。
ライムント3大傑作のひとつ。
華麗な魔法演出と、陽気で明るい魔法喜劇の合間に、にじみ出るように顔を覗かせる人生の苦味、人間観察の冷たさなど、大衆演劇でありながら、文学としても評価される傑作。
同時に、生前のライムントの作で最多の上演回数を誇る作ともなった。
・『モイザズァの呪文』(1827)
邦題名『モイザズァの魔法の呪い』オリジナル魔法劇。
ライムントの妖精劇は、基本的にハッピーエンドの軽妙な喜劇だが、本作と次作の『縛られた幻想』は、かなり文学、韻文劇等を意識したためか、前作の成功の後にも関わらず、それほどヒットしなかった。
・『縛られた幻想』(1828)
邦訳題名『縛られたファンタジー』オリジナル魔法劇。
これも、諷刺が効きすぎていたせいか、あまり成功はしなかったが、今日的な視点で読み直すと、けっこう現代的な側面も秘めていると思う。
・『アルプス王と人間嫌い』(1828)
二幕のロマンティックコメディ風オリジナル魔法劇。
3大傑作のひとつにして、ライムントの代表作。本作によって、ウィーン妖精演劇はある高みに到達する。
魔法の力と人間関係の悲喜劇が巧みに交錯し、人間嫌いとなった主人公ラッペルコップの側から見れば厭世的な悲劇、アルプス王やラッペルコップの娘・マールヒェンとその恋人ドルン達の目で見れば音楽喜劇、という構成が実にうまく効いている。
当時の大衆喜劇のスタイルをしっかりと継承し、全体としては他愛のないハッピーエンドに終るものの、妖精王(アルプス王)が化けた自分の行動を見る、というかなり幻想的な手法もなかなかに見事。
・『不幸を運ぶ王冠』(1829)
邦訳題名『災いをもたらす魔法の冠 あるいは 領土のない国王、勇気のない英雄、若さのない美人』二幕のオリジナル魔法悲喜劇。
初めて悲喜劇と銘打たれた作品で、喜劇の基本スタイルは継承しながらも、人間の内面の高貴さをすくいとろうとしたライムント最後の意欲作。
だが『モイザズァ』『縛られた幻想』と同じく散々な不評に終わり、ライムントはしばらく筆を絶つ。
魔法劇として、ある程度の完成には達しているし、けっこう好きな作品なんだが、民衆劇の中から立ち上がってきたライムントにとっては、やはりつらい戦場だったのかもしれない。
・『浪費家』(1834)
オリジナル魔法メルヒェン。
最後の作。そして3大傑作の最後の作でもある。
妖精劇として、文学の高みに達した傑作喜劇。
本作の成功の後、ライムントはその生涯を自ら閉じることになるが、まだ46歳だった。
この8本についてはそのうち感想を残しておきたい。
日本の演劇土壌では、このライムントやネストロイの、苦味を伴った妖精ミュージカルはちょっと商業上演としてはうまくいかないと思われるだけに、レーゼドラマとして鑑賞していかざるをえないのが残念である。
なお、レクラム文庫には、3大傑作『妖精界から来た少女』『アルプス王と人間嫌い』『浪費家』の3本が出ていたし、少々値ははるが、邦訳も出ていたはずである。
しかしまぁ、レクラムで読んでほしいかな。(^_^;