火星の月の下で

日記がわり。

◎『けんぷファー』に見るドイツ語

関西はかなり遅行放送地域なので、先日の日曜深夜にようやく第4話の放送がすんだアニメ『けんぷファー
アニメ自体は大好きな藤田まり子さんのキャラデが適度に悦痴で可愛いので、楽しみに見ているんだけど、そこに使われてるドイツ語があまりにひどいので、ちょっとだけメモ程度に残しておく。
・Kämpfer(Kaempfer・文字コードによっては崩れるかも知れないので、以下、ウムラウト含みの単語はタイプ字体を括弧内に併記しておく。)
表題にもなっている単語だけど、これ「男性戦士」という意味なので、女性戦士なら、Kämpferin(Kaempferin)の表記となる。
ただ近年男女平等の意識が高まってきているので、単語に女性語尾「-in」を意図的につけないケースもでてきているし、主人公限定ならもともとが男子なんで、ギリギリ許容できなくもない。もっとも、それ以外は、もともとも女子みたいだけど。
Kämpfer(Kaempfer)は、ヒトラーの著した『わが闘争』の原題『Mein Kampf』の「Kampf(闘争、戦い)」の派生語で、ミリヲタ系の人には「Kampfgruppe(カンプフグルッペ戦闘部隊)」ということばともども、なじみのある単語かも知れないけど、今日、Kämpfer(Kaempfer)と表記されると、スポーツ選手、という語義の方が最初にくると思う。
・Zauber(魔法、魔術)
けんぷファー」になった少女達が使う力のひとつで、主人公ナツルの主たる力なんだけど、「ツァウバー」って言ってるんだよなぁ・・・。
二重母音「au」は、確かに正発音では「アウ」に近い音になるし、ゆっくりと、母音を強調して発音すると、そう聞こえるかもしれないけど、語頭ではなく、子音に囲まれた単語で普通に発音されると「アオ」に聞こえると思う。
したがって、「ツァオバー」と発音した方がいいんじゃないかなぁ、と思ってしまったり。
まぁ、この単語についてはこの程度。
使い方も、魔法というよりは超能力みたいな扱いだったけど、Zauberはけっこう語義が広く、魔法、魔術、以外に、手品、トリックみたいな語義もあるので、ここはかなり許容範囲。
・剣=Schwert。3つの技のうち、残り2つが、ゲベーア(たぶんGewehr)とシュベアト(たぶんSchwert)で、まず剣から。
敵方になっている生徒会長が使う武器がこの「Schwert」なんだが、どう見ても短剣。
Schwertは、長剣です。(笑)
短剣を使いたいのであれば「Dolch」を用いるべきで、「Schwert」にも「剣全般」という意味がなくもないけど、あの短剣を指して「Schwert」っていうのは、かなり無理があると思う。
・銃=Gewehr。3つめ、主人公の戦いでのパートナー紅音が使うものなんだけど、これまたどうみても短銃。
Gewehrは、一般的にはライフルにあたる。
・サブタイの不統一。
第1話「Schicksal」シラブル数2.「Schick」の派生語、名詞。
第2話「Glühen(Gluehen)」シラブル数2.動詞の名詞化。
第3話「Lilie」シラブル数2.外来語。
第4話「Kriegserklärung(Kriegserklaerung)」シラブル数4.Krieg+s+Erklärungの合成語。
第5話「Komödie(Komoedie)」シラブル数2。外来語。
第6話「Heimkehr」シラブル数2.
第4話以外はシラブル数はそろっているものの、なんか並びがかなりむちゃくちゃな印象で、外来語が2つも入っているのが目に付く。
「Lilie」なんかは現代語では代替語がないので仕方ないとしても、「Komödie(Komoedie)」ではなく「Lustspiel」ではダメだったんかねぇ。
並びも、派生語あり、合成語あり、外来語あり、文法性もバラバラで、ザッと並べてみたところ、かなりしまりの悪い感じで、いかにも外国人が知ってる単語を並べてみました、みたいな感じで、どうも行儀のよくない印象である。
ドイツ語に限ったことじゃないけど、欧州の単語は、押韻とか、シラブルとか、わりと重視するし敏感なんで、こういう並びにはかなりの教養のなさも感じてしまうところ。
総じて感じるのは、日本人が和独辞典をひいて、適当に並べてみました、という感じかなぁ。
すべて無冠詞で使っているのも、なにか意味があるのではなく、ドイツ語における定冠詞、不定冠詞、無冠詞の違いについて、頓着しなかった、というのが正解だろう。
アニメ、マンガ、ラノベなんかで、ドイツ語が使われるケースを、ここ20年でよく見るようになったけど、本来ドイツ語がそれほど得意としていない分野でも使われていることがあるので、雰囲気だけでやってる、と感じることがしばしばある。
魔術、魔法、妖精、変態、なんてのは、ドイツ語よりも、イタリア語、フランス語の方がはるかに得意にしているところだし、神秘、恋愛、美少女、美少年ならスペイン語だろうし、妖怪、乙女ならロシア語だと思う。
もちろん、文学作品となってくると、必ずしもこの通りにいかないことの方がむしろ多くて、フランスの魔法文学とか、スペインの美少女文学、なんてのは、正直イマイチだったりする。
しかし単語の豊潤さ、という点では、こうなるんじゃないかなぁ。
ドイツ語が単語として得意としているのは、狩猟、機械、哲学、といったあたりだと思うが。