火星の月の下で

日記がわり。

◎『乱歩奇譚』の黒蜥蜴が楽しみ

新番組『乱歩奇譚』第一話、録画はしてるんだがまだ視聴していないので、視聴感想を載せているアニメブログの方ではなく、女怪と女賊に関してこちらで思いついたことを少し書いておく。
乱歩奇譚』のキャラシートを見ると、アケチが高校生、コバヤシ少年も中性的な童子設定のようになっているので、乱歩原作のアニメ化ではなく、単に素材を借りてきだけのラノベアニメみたいになってしまうのだろうけど、脚本が上江洲氏なのでダークな雰囲気をうまく仕込んでくれるのではないかな、と期待しているところ。
さて、本編をまだ見ていないので本編の感想ではなく、キャラシートに載っていたある人物について。
「黒蜥蜴」・・・そう、あの黒蜥蜴がキャラシートに載っているのだ。
「特殊犯罪者の独房に収監されている女賊」とあるので、あの名作『黒蜥蜴』とはまったく違う、単なるキャラだけを借りてきたような感じになりそうではあるが(もっとも原作の黒蜥蜴、緑川夫人は三十代の美女設定だが)どういう処理がされるのか今から楽しみにしているところ。
さて、その黒蜥蜴・映画版、ワタクシなどは何といってもあの画面狭しと踊り狂うミュージカル仕立ての京マチ子版の方の印象が強く、丸山明宏(現:美輪明宏)版の方が人気は高いようだがそっちはあまり好きではない。
その中で、明智小五郎と別の場所で歌いながら、やがて画面がミックスしてくるところがあり、探偵が女賊と恋に落ちているさまを、実に奇抜な映像で見せてくれていた。
エンタメにおけるラノベ的手法がかなり一般化している現在、主人公が異性の敵(男性主人公なら悪の美女、女性主人公なら悪の貴公子)と恋に落ちてしまうなんていうのはそれほど珍しいものではなくなっているだろうけど、この頃はまだそれほどポピュラーなものではなかったように思う。
個人的な思い出だと最初に探偵役と対決した「美しき女賊」というと、ルブランのルパンもの『8.1.3』を思い出す。あの鋭利な殺人鬼には子ども心にかなりゾクゾクしたものだった。
犯人が美貌の悪女でしたというのはそれ以前からあったとは思うものの、個人的な読書体験としてはあれが最初。ただし原作の翻訳ものではなく、子ども向けにリライトしたものではあったけど。
だがそこには『黒蜥蜴』ほどの屈折してダアクな恋情、暗いロマンスの影は希薄だった。
女賊、女怪、というのはサスペンスものを読むときに、普通の知能犯罪者とはまた違った魅力を醸し出してくれる。
犯罪がからむと、一般的には男性より非力である女性ならば筋肉よりも知能を使って正義の執行者達とわたりあうことになるので、そのあたりの知的トリックの面白さ、という面も出てくるが、同時に犯罪捜査だけで割り切れぬ性的倒錯も混ざり込んでくる。
犯罪が知的対決になるだけでなく、心理的要因もからかんんでくる、その面白さ。
もちろん男性犯罪者による知能犯罪小説においても繊細な心理要因を語ったものはあるけど、女賊モノはまた違った味になっている。
ただまぁ世俗的な頭に語らせると、乱歩モノをするのならラノベアニメみたいにするのではなく『廃人二十面チョ』みたいなのにしてほしい、と思ってしまったりもするのだが。