火星の月の下で

日記がわり。

がんばれ、関西将棋

NHK杯1回戦、南九段対中川七段戦を見る。
先手中川七段の、角換りからの力戦模様で、中盤の入り口みたいなところで、南九段が不用意についた七筋の歩に銀が出てきて、明らかに作戦負け。解説の脇八段が、「仕掛けのスキなのか、それともうっかりしたのか」と言ってたけど、その後の飛車の右往左往ぶりとか見てると、どうもうっかりしたような気がしてならない。一瞬、昨年の対羽生戦での、まったく勝負にならない完敗ぶりを思い出して、絶望的気分になったのですが、後半、歩成のあたりで逆転(中川七段が対応を誤ったようにも見えたけど)最後は南九段らしい重厚な攻めで辛勝。2回戦は同じ関西、若手の筆頭・山崎六段。
南九段は先の順位戦・B級2組でも勝って2連勝と、いい出だし。こちらもがんばってほしい。
復調気運の漂う南九段ですが、羽生に七冠くらって以降の関西将棋界の地盤沈下は目を覆いたくなるものがあって、現在7つのタイトルで、関西勢は0、定員10人のA級で、関西は谷川浩司一人。定員13人のB級1組でも、井上八段、阿部八段の二人だけ。定員制ではないB級2組には、23人中10人と、そこそこいるんだけど、内藤九段、桐山九段、南九段のようにかつてはA級をはっていたのに落ちてきた人か、西川七段、脇七段、浦野七段のように、ほぼここが上限のような四十代棋士だったりで、あまり明るい展望がありません。(浦野さんは1期だけB1にいたことがありますが)まぁ、三十代の杉本六段、畠山兄弟などはまだまだB1昇級の目がないわけではないですが(杉本は関西所属といっても正確には名古屋ですけどね)それでも、Aまでいくのは、かなり苦しいでしょう。
関西在住でがんばっている棋士というと、A級で関西の孤塁を守る谷川十七世、復調の気運が見える南九段、内藤九段、と40代以上ばかり。若手というと、ほんとに、山崎六段(C級1組、24歳)ただ一人、という感じです。
まぁ、谷川さんはまたタイトル戦に出てきてほしいし、名人戦にも出てきてほしい方ですから、過去の人扱いをしてはいけないんですが、タイトルにからめそうなのが谷川さんと、あとかなり贔屓目に見て山崎さんくらいしかいない、という現状は、悲観的にならざるをえません。
A級には、関西奨励会出身、もしくは在籍経験のある佐藤康光棋聖(京都出身)と久保八段(兵庫出身)もいるのですが、どちらも東京に移住して、現在東京棋士。(久保さんはタイトルとれたら関西に帰ってくる、みたいなこと言ってたんですが、結婚しちゃったしもう無理だろうなぁ)
かつて、昭和の終わり頃、A級10人のうち、関西棋士が半分を占めていた時代を知るだけに、寂しいものがあります。
関西勢力にがんばってほしい、というのは、関西出身かどうか、ということではなくて、関西に住んでいる棋士ががんばってほしい、ということで、地元、近いところに棋士が住んでいる、ということが将棋に接する機会も増やすし、指導を受ける機会も増えてくるわけです。特に関西・上方は昔から江戸・東京以上に将棋が盛んな土地柄だっただけに、実際にプロの棋士が数多く近くにいる、っていうのは、けっこう重要なことでと思うのですよ。
別に偏狭な地域ナショナリズムで思っているわけではありません。
昔と違って、棋譜データの整備が進んだ現在、居住地の差、というものは、昔ほど大きな要素でなくなってきていると思えるだけに、残念です。*1もちろん、首都圏の方が人口が多いので、関東有利になるのは仕方ないのですが、現状は、人口比以上の差がでている。もちろん、データの問題だけでなくて、人が多くなれば、研究の質や密度も上がってくるので、単純に人口比だけで見れるものでもないのですが、それにしても、差がつきすぎている。特に20代以下の若手に、圧倒的に差をつけられているように思える。正直山崎さん以外に、タイトルを狙えそうな人が見当たらないのですよ。
ただ、そんな中にあって、22歳、若手実力派の一人だった橋本四段が関西に帰ってきてくれたのは、嬉しいニュースで、今期の昇級を期待しています。
山崎、橋本の両若手実力派の次に期待できそうなのは・・・、うーん。(笑) 
個人的に期待してるのが、村田四段(23、C2)、小林裕士五段(28、C1)なんだけど、どうかなぁ。矢倉五段や安用寺五段なんかも期待の星だったんだけど、20代のうちにC2をぬけられなかったからなぁ。がんばってほしいんですが。
奨励会にまで目をむけると、糸谷三段、豊島三段と、若くして昇段してきた棋士もいて、期待はふくらむんだけど、なんせまだプロ四段になってないので、言及するのはグッとこらえておきましょう。

*1:このデータ化してしまった、ということが東京への一極集中を加速した、という面も大きいのではあるが。