火星の月の下で

日記がわり。

イーグルスの誤算

今期から野球の延長が大幅に減ったみたいで嬉しい。
もっとも、肝心のSUNの阪神戦完全実況は存続しているので、アニメファンとしてはメリットの享受にはそれほどあずかれていないが、こういう傾向が出てきてくれるのは嬉しい限り。
野球は専門チャンネルで見るべきである、と思う。
以前にも書いたけど、地上波の実況延長には不快感を持ってはいるが、野球観戦そのものは嫌いじゃない、っていうかむしろ好きな方。
大好きなブレーブスがなくなってしまって、今ではラグビーの方が好きだけど、夏場は野球観戦が好きだ。
もっとも、奈良のド田舎にひっこんでしまったので、簡単には西宮球場(今では球場すらなくなってしまったが)や神宮、後楽園には行けなくなってしまい、もっぱらテレビ観戦。まぁ、邪道といえば邪道なんだけど、ド田舎隔離者なんで、以下の暴言も多めに見てください。(^_^;
それで今期プロ野球についてぼんやり思っていることとかを書いておく。
楽天イーグルスと野村監督について。
元来が阪急ファンだったので、大嫌いだった近鉄の血を引く楽天なんぞに愛着もないし(もちろん、オリックスにもない)どーでもいいんだけど、名将智将と言われる野村監督にしてのこの惨状と、監督就任時の、首脳陣とのちょっとしたイザコザのようなものを覚えているので、それについて思うところを少し。
まず、1年で首を切られた田尾監督の後を継いで就任した2代目監督の野村克也
選手としての栄光は言うまでもなく、監督としても、南海、ヤクルトと、毛色のまったく違う球団を優勝させて、監督としても一流であったことを示した人物であることには異論はないだろう。
その野村監督が就任時に「すぐに結果を求められても困る」というような発言をしていた。
楽天の昨年の戦力を見るに、この発言自体は極めて適切な発言だったと思うが、その後の戦力補強と、この野村自身のコトバを聞いて、ちょっとした不安が頭を掠めたのである。
野村監督は、ひょっとして「育てるタイプ」の監督だと思われているのではないだろうか、ということだ。
フロ野球の監督像としては、いろいろなものがあると思うけれど、「育成型(育てるタイプ)」と「采配型(使うタイプ)」で分類する、というのもあると思う。
前者の代表格が、大毎、阪急、近鉄で数多くの選手を育てた西本幸雄、後者の代表格が、読売、西鉄、大洋、近鉄、産経でユニークな選手起用をした故三原脩、と漠然と思っている。
もちろん、西本監督にしても采配や起用に抜群の手腕があったし、三原監督も多くの名選手を育成しているから、名監督と呼ばれる人には、どちらの腕もあったことは言うまでもないけど、傾斜として、育成か采配か、に傾く、というのはあったのではないか、と思う。
ここで野村監督なのだけど、私は「采配型」の監督だと思っていた。
南海時代には、山内、江本と、他球団から引っ張ってきた投手を主戦に据え(これに西岡を加えた3本柱で)、前後期の頃のパ・リーグで、後期全敗だった阪急をプレーオフで倒し、敗れたとはいえ、日本シリーズで巨人相手にやった奇策の数々は、どうみても「采配型」の監督だった。
ところがヤクルトでは、古田、石井を筆頭に、多くの新人選手が成長してしまったことから、なんとなく「育成型」のようなイメージが先行してしまったのではないかと思う。
しかし、ヤクルト監督時代も、使うのがうまかった監督、というイメージも強くあった。
それは、池山、内藤といったあたりの扱いと、入団時から(無名ではあったが)ほぼ完成していた古田や石井らを勇気をもって使い続けたことの印象が強かったからである。
まぁ、この使い続ける、というのも育成の一種、と見ることもできるから、これをもってして育成型、と言えなくもないのだが、采配型の特徴は、人材を見抜く目にある、と思っているので(育成の要素を否定するわけではないけれど)やはり采配型の人間だったのではないか、と思ってしまうのである。
いみじくも、戦っている相手の長嶋茂雄・読売監督が「野村が育てたわけじゃなくて、野村の言うことを理解できているヤクルトの選手が優秀なんだ」みたいなことを、まだボケる前に言っていたのが思い出される。
さすがに長嶋は、育てるのはヘタッピだったけど、人を見抜く目は一流だったな、と思ったものだった。
ヤクルト監督就任時に、野村は異例の就任表明をやっている。曰く「まったく自信はありませんが、お受けします」というもの。
自信なく受ける人もいるだろうけど、ここまではっきり言う人は知らなかったので、ちょっと吃驚したものだった。
たぶん、ヤクルトの首脳は、ものすごくがんばって良い選手を集めようとしたんだと思う。現場の意見もちゃんと反映させて。
それ以前からいた主軸のデータもしっかり渡していたのではないだろうか、まぁ、これは当然かもしれんけど。
古田も、育てた、という割には、もう2年目に首位打者になってるし、もとより最初からかなり素質はあったのだろうと思う。
ただ古田の環境(高校が阪神間の公立高で、大学が立命館、社会人がトヨタだったので)彼の才能を的確に見出す指導者がいなかったのではないか、と思う。
これについては、とある番組で、古田が高校時代の級友と会う番組が昔あって、その中で「報徳の監督が『あの捕手はいったい誰だ』と言ってた。やっぱり見る人はわかってたんだなぁ」という級友がいて、やはり一流の指導者とあたってこなかったために、入団当初スカウトが野村に「打撃には目をつむってください」なんて言ってたのではないだろうか、と想像しているわけだ。
その後、野村にとっても阪神にとっても暗黒時代となる、阪神監督時代。
阪神は伝統もあり、球場設備などもヤクルトとは比較にならない、と言って当初外交辞令を連発していた野村だったが、やがて阪神球団のとんでもない勘違いがボディブローのようにジワジワと効いてきたようだった。
それは、「阪神は次に岡田という生え抜きの監督を用意しているので、彼のために、徹底的に選手を育成してやってほしい」という阪神側の願望だったのだろうと思う。(3年連続、前年から含めると4年連続の最下位のため、実際はさらに星野という1クッションが置かれたが)
ヤクルトでの成功を受けて、野村自身も自分は育成型の手腕にも秀でている、という錯覚があったのではないだろうか。
そんな中でも、赤星、井川、という人材を引き上げてきたのはさすがだったが、最後まで認識のズレは埋まらなかったように見えた。
そして、楽天監督である。
遠い仙台という事もあって、球場観戦は1試合もできなかったが、田尾監督はそれなりによくやっていた。
あの選手層と質を考えたら、誰がやっても同じ結果になったと思う。
そこで楽天が、阪神と同じように「どうか育ててやって下さい」なんていう考えをもっていたら、さらなる惨状になるのではないか。
阪神のように、次に生え抜きを用意しているので、ってことは物理的にないはずなので、結果も求められている、ということなんだろうけど、そのためには良い選手をもっととってこなくてはダメだろう、かつてのヤクルトや西武のように。
かつて福岡から球団を買って、埼玉にフランチャイズを移動させた西武ライオンズは、最初の2年間は最下位だった。
そこから広岡監督を得て、黄金時代を作ったのだが、楽天がそうありたいと思うのなら、もっともっと野村の要求にこたえなくてはいけないと思う。読売から選手の提供があったのに断っていた、とかのニュースを聞くと、この球団は、少なくともいまのままじゃ、かつての西武みたいにはなれないなぁ、と思ってしまうわけだ。