火星の月の下で

日記がわり。

狩人の合唱

昨日買ってきたクライバー版『魔弾の射手』を通しで聞いた。もう何回も聞いた。そして聞いている。(笑)
狼谷の場面は涙が出るくらいに素晴しいし、アガーテのアリアは可憐で実に潤いのある優しさに満ちているし、ご贔屓の歌手、マティス演ずるエンヒェンがアガーテとからむあたりはもうクラクラくるしで、やっばり良いオペラです。あらためて実感。
通しで聞いていて、ドキッとしたのが、3幕フィナーレ前に歌われる合唱曲の名曲、狩人の合唱。
たぶん『魔弾の射手』のなかでは一番有名な曲だと思うし、今でも中学か高校の音楽の教科書に載っていると思う。
ところが、通して聞いてみると、これは単品で聞くより、歌劇の中で聞くべきだ、と改めて思った次第。
第2幕最後の狼谷の場面から(何度でも書くけど、ちびりそうなくらいステキだ)「魔弾」が手渡され、魔的な雰囲気が漂いはじめ、一方で、アガーテや狩人たちの世俗的な喜び、悩みが漂ってくる、その雰囲気の中で、暗雲を一瞬吹き払うように現れるのが、この狩人の合唱。
第3幕前奏曲にも、メロディだけは登場するが、このときはどちらかというと、「あ、いよいよだな」という感じなのだが、いくつかの女声アリアのあとでこの合唱曲が流れてくると、もう血わき肉踊る、という感じだ。
加えて、ドイツ語の歌詞に実によくあっている。言語との融合性という点では、ヴァグナーより上じゃないかとさえ思えてしまう。
なるほどたしかに、ドイツオペラの最初の完成の姿であって、ここからドイツオペラが本格的に始まる、といわれるのも当然のことだろう。
今回、久しぶりに全曲通して聞いた、ということもあって、昔はそれほど気にしてなかったことが、妙に鮮明に響いてくるのだ。
全曲を聞く以前、音楽の教科書に載っていて、ピンで聴いていたときには(しかも日本語訳詞だった)「単純和声だなぁ・・・」くらいの感慨しかなかったけど、今回、、さすがは名曲として抜き出されることはある、と思ってしまった。
よく、国語の教科書に載ると、どんな名作文学も駄作になる、とは言われるが、音楽の教科書もそんなことがあるかもしれない。
それにしてもヴェーバー、実に美しい旋律、美しい和声を作っている。
クライバーが、そういった和声を際立たせるかのように、丁寧にオケを鳴らしている、っていうのもあるだろうけど、ヴェーバーが本来持っている、叙情家、としての側面も十二分に発揮されていると思う。
器楽曲でも、舞踏への勧誘、2曲のクラリネット協奏曲、交響曲ピアノソナタ等、良い曲をたくさん残しているから当然ともいえるんだけど、さすがに代表曲とされるだけあって、旋律と和声の素晴らしさは、ビンビン伝わってくる。
十代、二十台の頃とは違った感動があった。
若い頃に、もっと聞き込んでおくんだったなぁ。。。十代の頃は、オペラより器楽曲、特に室内楽に比重を置いていたので、自分では歌劇もそこそこ聞いているつもりではいたけど、聞き込む、というところまでは行ってなかったんだ、という悔恨の気持ちも少し出てきたところである。
まぁいいや、あと人生の残り時間がどれくらい残ってるかはわからないけど、これからも積極的に聞き込む機会をもっていこう、と思う。