毒蛇御殿
猛毒ヘビ51匹、渋谷の「ヘビ屋敷」で捜査員が見た仰天光景 輸入規制なしの不思議
ほら、こういう流れになってきた。
だから危険動物とか特定動物とか飼ってるやつは、我々合法的に爬虫類飼育を楽しんでる人間の敵なんだよなぁ。
で、いくつか気になるところがあったので、簡単に記録しとく。
・海外で生息する毒ヘビのほとんどは無許可飼育が禁じられているのに、輸入規制はないという盲点。
あれ？・・・特定動物が規定されたときに、輸入規制もかかってたと思ってたんだけど、そうじゃなかったの？
４年前グリーンアノールとタイワンスジオが特定外来生物被害防止法に指定されて、もう輸入できない、と聞かされたときの、我々爬虫類飼育者のショックはかなりなもので、まだ記憶に新しいのだが、特定動物はこれら特定外来生物とは違って規制する条項は入ってなかった、ということなのだろうか。なんかすごく片手落ちな感じだな。
ちなみに、タイワンスジオは無毒で丈夫な中型蛇で、色彩は全然違うけど、飼育の雰囲気は本邦のアオダイショウに近いところがあって、ペットスネークとしてはたいへん人気があった蛇である。
飼育自体が禁止されたわけではないので、国内流通分の子孫とかだったら飼育しててもいいんだけど、なんせ丈夫で環境適応力が高い、ということで、環境保護の観点から輸入禁止処置されてしまったのだ。
英語では「ビューティ・スネーク」といわれて、欧米ではアジア産の美蛇として、また入門蛇としてアオダイショウとともに人気があって、今回の毒蛇なんかとはまったくの対局にある良い蛇だったんだけどなぁ・・・。
そんなわけでスジオが輸入禁止で、こういった毒蛇が野放しでした、っていうのは、一般の爬虫類飼育者としては、なんかもう怒りを感じるところだね。
・飼育者宅での写真。
うわ・・・プラケ飼いかよ。(笑)
これ見たらたいていの人はひくんだろうなぁ。。。文中にもあるけど、飼育蛇の環境として、きわめて不自然、不十分。
ただなぜこういうことになってしまったのか、というのは十分想像のつくところで、、いわゆる入門蛇クラスのペットスネークとして、コーンスネーク（通称コーン）とか、カリフォルニアキングスネーク（通称カリキン）なんかの北米産の中型蛇がいて、美しく、蛇としては繁殖も容易で、欧米では子供でも安全に飼える人気のある蛇なのである。
で、こいつらの飼育ケージというのが、小さくてすむ、というのがあるわけなのだ。
だいたいトグロをまいたスペースの倍程度で十分なので、全長150cm程度のコーン成蛇でも45cmのフラット・プラケで終生飼育できて、しかもちゃんと繁殖までできてしまうのだ。*1
そんなわけで、地上棲・中型蛇は狭いスペースで飼育できる、という幻想というか錯覚というかが、若い爬虫類飼育者なんかにはあって、数をそろえだすと、蛇の特性も考えずに同サイズのフラットプラケを並べていく傾向がある。
だがもちろん、そんな飼育が許されるのは、そういった入門種の、無毒でおとなしいナメラ類の限られた種だけである。
爬虫類は陸棲のペットとしては特に環境にやかましい連中なので、ちょっと変わったのを飼いだすと、とたんにその環境に頭を悩ませることになる。たとえば、国産のヒバカリとかジムグリなんかでも、けっこうちゃんとした飼育環境、熱帯魚なみの環境をそろえててやった方がいい。
ましてや、一般の無毒な蛇に対して、神経質なのが多いコブラ科、クサリヘビ科である。少なくとも１個体につき１つのシェルターを用意して飼育、したがって最低でも60cm以上の水槽を１個体ごとに用意するべきなんだが、写真を見る限り、まったくしてないね。
これはペットショップなんかの展示にも問題があって、蛇を売ってるペットショップは合法的な店であっても、あんな風にフラットプラケを並べて売ってる場合が多い。
ショップの場合には、飼育というより「キーブ」という名目だし、長期間はいないことが前提なのである程度許されるんだろうけど、飼育者による長期間の飼育であれば、あの展示を真似しちゃいけないわけだ。
とにかく、いろんな問題が垣間見える飼育写真であるな。
・51匹の中には、これまで研究所が飼育していなかった種類も多く・・・
これは爬虫類だけじゃなく、エキゾチックアニマル全体にいえることだけど、今の輸入ペット事情、研究所や動物園なんかよりも、マニアック、希少性のあるものがどんどん入ってきている。
水族館と、大手熱帯魚店との関係を考えれば、わりと想像がつくかな。
海外で日本の動物商のえげつない捕獲、乱獲ぶりもけっこう耳にするし、エキゾチックアニマルの飼育は、WC（野生採集個体）ではなくCB（繁殖個体）に移っていってほしいのう、という気持ちである。
爬虫類の場合、より「レアなもの」を求めたがるお子ちゃま心理が業界全体に蔓延してるので、難しいかなぁ、と思うところではあるが。
*1:交尾、産卵時にはちょっとスペースがいるけど。
