火星の月の下で

日記がわり。

納西語と古代日本語

ナシ語:ナシ族出身高山市の交流研修員に、武庫川女子大教授が聞き取り調査 /岐阜

上代文学や古代語が専門の同教授は高山市が97年12月に友好都市を結んだ麗江市を旅行した際、ナシ族が話し言葉に昔ながらのナシ語を用いていることに興味を持った。さらにナシ族の話し言葉の語順が古代日本語と似ていることを確認した。

納西族といえば、独自の文字「トンパ(東巴)文字」を持つことで知られる四川省南部の少数民族
トンパ文字は、超漢字にも登録されていて、TRONコードが付加されていることで、一部のOSマニアの間ではけっこう有名な、ほとんど絵文字のような文字。
支那56少数民族の中ではその際立った言語文化の個性で知られているけど、系統としては、ビルマチベット語派のロロ語(イ語)系に属し、ロロ語、リス語、ラフ語、アカ語などと同系統で、チベット語とも近い関係にあって、決して孤立している言語系統ではない。
上の記事で気になったのが、語順を同じくして、のくだりなんだけど、これって、目的語、補足語が述語の前に来る、主語と目的語の語順に強い規則性がない、といったあたりのことを言ってるんだろうか。
確かに、古代日本語の語順はS-C-V(Cは補足語)で、大陸文化の中心であった古代漢語のS-V-Cとは違う語順であった。
支那文化が長い間東アジアの規範であったため、なんとなくS-V-Cが正嫡で、S-C-Vが例外、みたいな印象があるけど、実はこの語順、けっこうあるんだよなぁ。
ロロ系諸語にはこのS-C-Vの語順になる言語は多いので、これをもって日本語との関連性云々、というのは、ちょっとまだ無理があると思うんだけど、それ以外になにか学術的根拠とか、調査報告とかあるのかな。
この辺の言語研究になると、西田龍雄氏や、大野徹氏なんかが精力的に研究を発表していたはずなんで、そのあたりの研究とのかねあいも気になるし。
あと気になるのが、声調の問題。
ナシ語には高平、中平、低降、低昇、と4つの声調があって、音節もこの声調と関連している。
現在声調のある言語でも古代にはなかったと推測されている例(ベトナム語等)もあるので、現在の声調が過去の声調を保障するものではないけど、このへんの日本語との大きな差、なんかも気になるところだ。
記事だけからの判断で、研究論文を見たわけではないけど、この記事から受ける印象は、なんか思いつきの段階のような気がする。
個人的には、もしこの辺の言語と古代日本語になんらかの関係があるとするのなら、むしろチベット語だと思うんだけどなぁ。語順もS-C-Vだし、助詞、敬語もナシ語より豊富だし。
チベット語にも声調はあるけど、断定的で、古代にはそれほど機能してなかったような痕跡も認められるし。もちろん、わたしのチベット語と日本語の関連性についても思い付きの域を出ないけど、それでもナシ語よりはまだありそうな気がするんだが、はてさて。
『言語』あたりで、研究をとりあげてほしいもんですな。