火星の月の下で

日記がわり。

○吸血鬼の令嬢はいつから金髪碧眼になったのか

アニメ『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』を見ていて気になったことのひとつに、ヴァンパイアの少女はいつから金髪になったのか、ということがある。
本作のほぼ主人公格と言って良い、吸血鬼の真祖たる地位にある、吸血鬼の女王にして少女の似姿をとるミナという少女がいるのだが、これが目の覚めるような金髪である。(碧眼ではないが)
原作を読んでないので、アニメ版限定で書くけど、高位の吸血鬼の少女が金髪、というのは、最近ではもうかなり固定したイメージになっていると思う。
男の吸血鬼はそれでもまだまだ黒髪〜栗毛が多いように思うけど、高位の吸血鬼となると、男・少年でも金髪が増えてきたように思うこともあるし。
こと少女吸血鬼に関しては、舞台が日本で、被害者の日本少女が吸血鬼化する、とかっていうシチュでもないかぎり、ほとんどが金髪になっているように感じる。
実はこれ、かなり奇異に感じるんだよなぁ。
というのは、イメージとしての吸血鬼って、黒髪に土色の肌、みたいなものがあって、これは吸血鬼の先祖が生きている死体で、人間をむさぼりくうという死啖鬼、死喰鬼にあった所以で、伝承、文芸ではそういうイメージがあった。
たぶんこれは、最初に吸血鬼という存在を知ったものが、小説等の活字だったか、映画だったか、漫画・アニメだったかでかなり変わってくるからじゃないだろうか。
つまり、漫画で知った世代、というのは、男性吸血鬼はともかく、女性吸血鬼が金髪碧眼である、もしくはあってもおかしくない、というすりこみができているようにと思うのだが、どうも小説や詩、伝承が先だった者としては、そういう例もなくはなかったけど、かなり例外的で、一般的な感覚からはずれていたのだ。少なくともカーミラ以前の吸血鬼作品を喜んで読んでいた者としては。
男性吸血鬼の場合、まだドラキュラ映画の影響からか、暴力装置としての側面が色濃く残っているので、黒髪、土色の肌、というのは残っているように思うが、少女吸血鬼となると、とたんに金髪碧眼が増えてくる、というのも、はたしてどうなんか、という気がしなくもない。
いや、もちろん「どうなんか」と思っても、思うだけで、それが正しいとか間違っているとかっていう論にするつもりは微塵もないんだが。
ただ、ここに「欧州系の高位の少女」という属性が加わったときに金髪碧眼という要素が強くでてくるように見える、ということに注目したいのだ。
うがった見方、言い方をすると、日本人の「肉体的美貌に関しての白人コンプレックス」みたいなものがかなり作用してるのかな、と。
上で書いた、文芸上の例外的金髪、というのは、だいたいが被害者の女性がそうだったから、というもので、高位のシグナルとしてははたらかない。
つまり、日本で、日本少女が被害にあって、黒髪、もしくは日本人髪の吸血鬼ができあがる、というのと同じ理屈である。くどいけど、カーミラ以前ね。
このあたり、吸血鬼の容姿の変遷でまとめてみると面白いかなぁ、とぼんやり思ってんだけど、さすがに網羅的な分析はかなり厳しいので、時間があれば、といったところか。