火星の月の下で

日記がわり。

NHK杯戦 有吉九段-高橋九段戦

有吉九段、最後のテレビ将棋を観戦。
結果は、高橋九段中盤の構想、歩頭へとんだ桂馬以降の猛攻がきれいに決まって、有吉九段、反撃する間もなく終了。
解説の中村修九段も言っていたが、最後で「火の玉流」怒涛の攻めが見られなかったのは、かなり残念ではあったが、数日前に少し書いた「先手番・矢倉戦」になってくれたので、そういう意味では満足している。
冒頭、中村九段も触れていたが、最近の高橋九段は後手番だと横歩取り、八5飛、なんてのもよく見るので、高橋九段としては、けっこう空気を呼んでくれた、という感じかな。
序盤こそ古風な感じで始まったが、早囲いあり飛車先不突きありで、現代戦法をちゃんと消化した上での進行。まぁ、矢倉の飛車先不突き自体は、登場してもうかれこれ30年くらいにはなるけど。
そして勝負は、たとえ相手が大豪最後のテレビ将棋であっても、ゆるめず、一気果敢に攻めきる。ラストがやや一方的だったけど、いい対局でした。
冒頭、有吉九段・優勝時のパネル、その翌年、当時新四段になったころの高橋-有吉戦の写真、なんかも出してくれて、番組としては、けっこうがんばってくれた。
不勉強で知らなかったのだが、有吉九段が予選を突破して本戦に出てきたのは、最年長記録だったらしい。
ちなみに、それまでの記録は、丸田九段の74歳。75歳の有吉九段がこれを少し更新してくれたわけだ。
丸田九段の現役最年長は更新できなかったが、1000勝してタイトルも取って60歳までA級にいた有吉九段である。史上最強の七十代と言ってもいいだろう。
有吉先生は朴訥な感じがするときもあるけど、ファンを大切にしてくれるし、棋譜が我々愛棋家にとって参考になる、まねやすいものが多い上に、棋理に則ったものが多いという点で、棋譜でも我々をしっかり導いてくれた立派な棋士だった。
かつてライバルであった内藤九段と比べて、あまりに手堅いその手法を故・芹沢八段に揶揄されたこともあったようだけど、実際に新聞や棋書で棋譜を並べていた者にとっては、有吉九段の棋譜はどれも宝物のような教則本だった。
もちろん、まったく棋風の違う内藤九段の棋譜も大切な宝物だったが、有吉九段の棋譜も、また宝物だった、といえる。ともかく、これで有吉九段の筋の良い攻め将棋がテレビでもう見られないのかと思うと、残念で仕方がないが、これも時の流れなのだろう。