火星の月の下で

日記がわり。

乙嫁語り第2巻

乙嫁語り第2巻』が田舎の近くの本屋ででもおいてあったので、遅まきながら購入。
民族衣装ものはけっこう好きで、昭和の頃にそういった作品を描きたくて編集さんといろいろ交渉したこともあったけど、結局商業誌時代には夢がかなわなかった。
そんな理由もあって、真正面から堂々とその題材で切り込んでくる本作は実に楽しく、綺麗で、見ていてしみこんでくるものを感じてしまうのだ。秀作である。
まぁ、私が描きたいと思い、資料をせっせと集めていたのは南アジア〜東南アジア、および中世欧州のものだったので、地域、時代としては少し違うが。
みっちりと各場面に至ってミニアチュールのように書き込まれた文様、風景、人物、など、溜息が出るほどの精緻さで、こういった「絵」を鑑賞するだけでも本作の価値はかなり高い。
もちろんお話も、今のところ表立っては出てこないけど、中央アジアで英露が対立し始めた帝国主義時代、おそらく19世紀末くらいの背景が心憎いばかりのさりげなさで用意されていて、物語に「深み」を出してくれている。
どれもこれも素晴らしいのだが、その素晴らしさが同時にやや難、と感じるところもあって、あまりに精緻なので、いわゆる「抜き」がないこと、画面の中で、時に「線としての」遠近が崩れてしまっいるところがあること、などがそれで、「絵」としては素晴らしいの一語だけど「漫画」としては・・・、と少し感じてしまったところである。
まぁそれも「あえて言えば」といった程度で、作品の味を壊したり、損なったりする次元のものではないし、本作の素晴らしさに傷となるものでもない。
絵のうまい作品にときおり見られる「読みにくい」「上手だけど見づらい」という類でもないしね。
素材に関しては、もう少し伝承文芸のところにも踏み込んでほしい、とは少し感じるんだけど、まぁ、人物模様がメインなので、そういったものがなくても十分楽しめている。
個人的には鷹好きの少女ティレケがどうなるのか、そのあたりがたいへん興味あるなぁ。(^_^)