火星の月の下で

日記がわり。

◎スタンダード化以前の魔法少女

百家争鳴状態になりつつある『マドカ★マギカ』、本編も抜群に面白いのだが、いろんな人の意見を読むのも面白い。
そういう意味で仕掛けの優秀さが際立っている、といえるだろう。
【Togetter】雑考#4:魔法少女アニメ考 サリーちゃんからまどか☆マギカまで を読んで、少し思ったこと。
歴史的に振り返ってくる人も少しずつできてきたけど、あまりにもぴえろ系、ぴえろ魔法少女登場以後の東映系をスタンダード化しすぎて、その前後にあった揺れをカバーできていない印象がある。テーマが広大なので仕方ないとは思うけど。
ここでもその後について少し突っ込んでいる人がいるけど、本稿ではそれ以前について、少し。
魔法少女が戦うようになる以前、バトル系以後との対比で、バトルしなかった魔法少女をひとまとめにしてしまう傾向があって『サリー』と『ミンキーモモ』の間をひとまとめにしてしまっている不満がある。
だが、この10年以上の期間に何も変化がなく再生産の繰り返しだったわけでなく、『セーラームーン』や『おじゃ魔女』以上の分岐点が秘められていたわけで、その一例として次の2作品を忘れてはいけないと思う。
・『魔法のマコちゃん』以下、『マコ』で書く。
・『魔女っ子メグちゃん』以下、『メグ』で書く。
『マコ』の中にあったとんでもないグロテスクさ、社会性、リアル指向は、結局その後継者が生まれなかったので、分岐点とまではいかなかったけど、少なくとも、

いわゆる魔法の国の女の子が人間社会にやってきてどたばたするというコメディ。

なんかとはまったく違う、かなり異質の色合いを持っていた。
公害病がテーマになったときの汚染された河童、基地演習問題や受験戦争、といった、今日の魔法少女ではほとんど取り上げられなくなったもの(ないわけではないけど、切り口はかなりマイルドになっている)や、「肉体」を意識させるエピソード*1なんかもあって、

つまり「主役そのものが魔法使いという非日常的な存在である」というパターン。魔法を使うことに何の疑問を持たないし、使うことが日常のようになっている。

・・・というのとも、相当離れた方向性を孕んでいた。
ただし『マコ』が抱えていた「魔法の矛盾」も、後生の「魔法の矛盾」とはそうとう違ってて、その後の後継者がいなかったこともあって、かなりの部分、忘れ去られてしまっているが、それほど天然な魔法少女ではなかったのだ。
そしてもう一つ『メグ』の方は、社会性やリアル指向こそ『マコ』ほどにはなかったが、性的なニュアンスはそこそこあって、これも後年のスタンダード化されたぴえろ系とは異質である。
ファッション性という観点では『プリキュア』に近い線を感じなくもないけど、OPで敵キャラがパンチラをのぞき見て喜ぶ、なんて場面は絶対にありえない。(笑)
また魔法世界の異質さは、同じ荒木伸吾による『キューティハニー(初代)』のシュールな世界観ほど徹底はしていなかったがかなり共通項があって、日常−非日常の対比は、前衛に近づいていった時期でもあった。
いささか極論だけど、『血だまり』の重さは『マコ』から、世界構成のシュールさ、少女の意味合いの重さなんかは『メグ』から受け継いだ遺伝子じゃないかなぁ、とぼんやり考えてしまったりする。
ただもちろん、時代的制約が相当あったので、そういった重いエピソードよりも、軽めの話の方が多かった、というのも確かではあるが。
こういった、びえろ系魔法少女によってなされたスタンダード化が、それ以前もそうであった、という錯覚を生むのも、最初の2つ、『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』が、このスタンダードに近かったこともあると思う。
魔法使いサリー』(以下、『サリー』とする、初期の『サニー』もここに含める)を語る際にも一つ見落としがちなことがあって、映像としては『奥様は魔女』の影響があるのはよく知られているところだが、マンガ作品として考える場合、その前の横山氏の大長編『おてんば天使』との関連は絶対にさけて通れないと思うのだ。
『おてんば天使』は、けっこうハードな展開があって、ギャング団やら家計の危機やら、少女マンガとは思えない社会性を内包していたが、そういった社会描写を経て出てきた作品である、ということ。
生前横山氏は「少年ものなら忍者だけど、少女ものだから魔法だろう」と、執筆動機のようなことを書かれていた文章があって、これなんかも具体的なバトルこそなかったが、根底にそういった意識があったことが伺わされる。
もう少し『血だまり』と関連づけて書きたかったけど、さすがにテーマが広範囲にわたるので、この辺で。
なんか散漫な文章になってしまった・・・時間があれば書き直そう。

*1:竜王がマコの元へ訪ねてきたとき、ミニスカートが理解できず「腹巻きか?」と訪ねるエピソード、そのときの妄想なんか当時としてはかなり刺激的だった。