火星の月の下で

日記がわり。

長調に始まり、短調に終わる

バロックから古典初期くらいまでは、曲の中に、あるいは楽章に分かれていても、開始調と終止調が一緒、というのはきわめて普通だった。短調開始作品においても。
ところが、音楽文化が貴族文化の中に取りこまれ始められた頃から、短調開始音楽が長調終止する、というのが増えてきて、終止調に限定して言えば、長調終止の曲が大半を占めるようになっていく。
ロマン派になってもこの傾向はあまり変らず、むしろ市民音楽へと変貌していって、いっそうその傾向が強くなった分野とかもある、たとえば協奏曲など。
短調開始作品でさえ、長調終止してしまうのだから、その逆、長調で始まり、短調とで終止する音楽というと、調性が無効化し、十二音以降を除くと、有名どころで、パッと思いつくのは、以下の2曲くらいしかない。
メンデルスゾーン交響曲第4番イ長調「イタリア」OP90
ブラームスピアノ三重奏曲第1番ロ長調OP8
いずれも素晴らしい佳曲なのだが、「イタリア」に関しては、終楽章のイ短調はサルタレロのリズムにのって情熱的なパッセージがかけまわるモノで、短調音楽の「悲哀」「憂愁」よりも、情熱がまさっているようだ。
ブラームスピアノ三重奏曲の方は、むしろ悲哀の情熱に満ちたもので、ロマン派としてのブラームス、というものをよく伝えてくれている。
どちらも大好きな曲なので、こういう短調終止、もっとあってほしいものなんだがなぁ。。。
これ以外にもたぶん、探せばあるだろうけど、複数楽章の曲で、音楽的にもしっかりしていて、ということになると、まず思いつくのがこの2曲。
ただロマン派というのは、けっこう主情のようなものが優っている側面もあるので、もう少し探ってみたいと思っているところでもある。