火星の月の下で

日記がわり。

アニメ版『謎の彼女X』に感じる微妙なズレ

アニメ版『謎の彼女X』を見ていて、原作との間に微妙なズレを感じる。
デザインの好みはともかく、一応作画は統一されているし、筋の方もいくつかオリジナルもいれているとはいえ、概ね原作通りの展開で、良心的な制作だと感じるんだけど、どうも違和感というほどではないものの、なにがしかのズレのようなのを感じる。
植芝作品によく見られる、民俗的素材をごちゃごちゃと詰め込んだキッチュな雰囲気があまり出ていないとか、そういう画面的なことではなくて、感性の問題として、なんかちょっと違う、と言う感じがいつも少しだけある。
それは明るさの問題、さらにもっと深く性癖に対する自覚の問題・・・ではないか、という気がしているのだ。
アニメ版が「卜部美琴」という少女にミステリアスな雰囲気を強調するあまり、何か得たいのしれない重さを漂わせているのに対して、原作版では性癖のインパクトは強いものの、あまりそれに頓着するでもなく、普通の青春恋物語的な展開にしている。
つまり、原作ではこの「よだれによる交感」について、性癖の一端程度の認識で包括的に組み立てられているのに対して、アニメの方を見ていると、とんでもない変態性が浮かんでくる、そういう重さなのだ。
原作を読んでいると、作中人物が変態性癖の真っ直中にいる、という感覚、うしろめたさのようなものがないことはないもののかなり希薄で、世界観の中で日常化している。
これは漫画よりもハードルを下げなくてはいけないアニメとしては当然の処置かもしれない。
その特殊な性癖をわかりやすく見せようとしてしまったために、かえってその変態性が浮かび上がってしまったような、なんかそんなズレなのだ。
原作は変態性の認識がうすい・・・ように感じる。異常性はけっこうあるのだけど。
友人の一人はこのアニメを見て「生理的に受け付けない」と言っていたのだけど、その感覚はものすごくよくわかるし、原作であらかじめ鍛えられてないと、引いてしまうのが普通だと思う。
それゆえこれはかなりの「上級者向け」作品といえるのかもしれない。
幸いなことに、『ディスコミ』以来、植芝氏の描く異様な世界観はかなり好きだったので、わりと普通に入っていけたのだけど、なんの予備知識もなくいきなりこのアニメ版を見せられたら、私もさすがに引いていたかもしれない。
かといって、かなりかみ砕いてくれているアニメ版を見た後で原作を見ても、むしろ感性が混乱するだけかもしれないし、そういう点でもこの作品は特殊な位置づけになるんだろうな、と思ってしまう。
とはいえ『ディスコミ』『夢使い』に比べると、かなりまっとうな青春物語なんだげとね。