火星の月の下で

日記がわり。

◎邦画

以前少し殺陣について書いたときに、ここ20〜30年の時代劇がとんとつまらなくなってきた、みたいなことを書いた。
あの頃は自分の中の保守化とか、老齢とかも理由の一つにあろう、と、深くは考えなかったけど、洋画(当然米国以外含)を見ているとそうでもなくて、現代作品でも十分に面白い、というか面白い方が多い。
面白い、つまらないは、個人の主観なので、私的な範囲で、という前提で書くけど、つまらないならつまらないでいいかなという気もしてきている。
もうそろそろ老境の域に入ってくるし、別に新しい流れの中で娯楽を楽しむ必然性もなければ、その世界で食っていくわけでもないので、まだ見ていない過去の名作を鑑賞していく、というのでもいいかな、と思い始める今日この頃。
一番映画をよく見ていた時代、というのは、二十代の前半で、あの頃はフィルムセンターとか池袋の文芸座、神戸だと元町を起点に旧市街の映画館で名画扱いになっているのをよく見ていたので、サイレントとかモノクロとかにはそれほど抵抗がない。
すでにビデオカセットの頃から『カリガリ博士』や『巨人ゴーレム』は購入して楽しんでいたし、ハリイハウゼンの特撮ものなんかも、まだ邦語字幕版が出る前から神戸の輸入商店で買い求めて、コマ送りしながら見ていた。
ということもあってか、その頃はもっぱら洋画中心。
邦画も見ないわけではなかったけど、洋画ほどには多くは見てなかった。
当時のガイドとして使ったのは、故・猪俣勝人氏の名著『世界映画名作全史(戦前編)』の文庫本で、とりあえずそこに載っている独仏の戦前映画からメインに見ていこうとしていた。
なにぶん戦前の作品なので、その手の名画座やフィルムセンターを巡ったり、待っていたりしてもついに見ることができなかったものもいくつかあるが、そこに載っているものから見ていって、随時もっと深いところ、に入っていく、という感じだったように思う。
邦画を積極的に見だしたのは30代になってからで、当時の同僚にものすごく映画好きだったのがいて、彼についていっていろいろと見たのがきっかけだった。特に同時代作品とかを積極的に見出したのはその頃。
それ以前にも見ていなかったわけではなかったが、邦画は圧倒的に時代劇、剣戟がメインだったので、現代劇作品というのを集中的に見て、その面白さに目覚めていった時期でもあった。
ただまぁ、恋愛モノとかアイドルものとかは、当時はあんまり好きじゃなかったので、その手の映画は最近になるまで敬遠してたし、いまでもアイドル系の映画はちょっとイヤだ。
そんな経緯があったりもするので、今、自分の中で一番欠落しているな、と感じるのが、昭和の頃の現代劇(同時代劇というべきかな)。
昨今の現代劇が全然面白くないので、そういったあたりを見ていきたい、と考えている。
残念ながら、こちらの好みにあうようなものが劇場にかかる可能性は皆無に近いので、DVDを主として自宅鑑賞になるんだろうけど、それもまたよし、といったところ。
最近は権利の年数が切れて、昔の映画がすごく安く出回っている、というのも拍車をかけてくれる。
邦画だとだいたい500円くらいから定価である。
しかも最近は10枚組で2000円を切っているようなシリーズも出ている。
こういうのを見ていると、良い時代になったなぁ、と思う。
どこかのサイトで「ほんとは悲惨だった昭和30年代」というのを取り上げていたが、文化的な面でも今の方が圧倒的に良い。
こういう状況の中で映画興業があるのだから、本来ならもっと頑張らなくてはいけない、同時代だけではなく、過去の名画と対決するくらいの気概でないといけないはずなのに、なんだかもうね、と言った感じだからなぁ、今の邦画は。
特に漫画原作のものとアニメからの作り直しがひどいように感じるが、たぶん私が漫画より、アニメよりだから、なんだろうけど。