火星の月の下で

日記がわり。

ピアノソナタ第17番ニ短調「テンペスト」第3楽章

佳境に入ってきた『絶園のテンペスト』を見ていると、執拗にベートーヴェンピアノソナタ第17番ニ短調第3楽章が響いてくる。
作品のテーマ、というより、単に沙翁の『テンペスト』つながりなのだろうと思うけど、BGMとしての使い方はまあまあ良いと思う。
ただし音楽としては、やはりピアノソロによる駆け抜けるようなパッサージュを聞きたい、と思ってしまうのだ。違和感とまでは言わないが。
ベートーヴェンのピアノ奏鳴曲は、その生涯にわたって作曲されているので、まさにベートーヴェンの音楽エッセンスが詰まったジャンルで、この第17番ニ短調も、中期のいわゆる「傑作の森」の一群の中にあり、ウィーン古典主義が完成し、そこからさらに来るべき浪漫派へとつながる息吹を濃厚に感じさせてくれる傑作である。
一般にベートーヴェンのピアノ奏鳴曲というと、愛称をつけられた3曲、『悲愴』(第8番ハ短調)『月光』(第14番嬰ハ短調)『熱情』(第23番ヘ短調)が有名で人気も高いけど、この第17番もこのメジャー3曲に次ぐ人気、知名度があるのではなかろうか。
実際、簡潔にまとまっていて、かつ詩情も豊か、親しみやすい旋律と特徴的なリズム感(運命交響曲につながる、という研究も多い)、そしてさらにピアノ学習者にとっては、中級程度くらいになるとなんとか弾ける範囲に入ってくる、ということもあって、好きになる要素はそうとうにつまっている。もちろん私も、数あるピアノ奏鳴曲の中でも大好きな一曲。
それだけに管弦楽で演奏されていると、アニメのBGMとしては問題ないけど、音楽としてはちょっと不満だな、となってしまうのである。