火星の月の下で

日記がわり。

C2順位戦・第2局

花のA級に対して、板子1枚下は地獄のC級2組。
昨年は、プロ四段になって3年、最速でフリークラスに落ちてしまった熊坂四段の話題にわきましたが、今年は将来有望と思える棋士が(少なくとも現時点では)あらかた昇級してしまい、加えて奨励会3段リーグからもそれほどハッとする人材が(これも現時点で、ですが)上がってきていないため、それほど注目は集めていないように思える。
下の方に書いたように、関西将棋の応援をしているので、期待している人は何人かいます。村田四段とか、矢倉五段とか、安用寺四段とか。でも、安用寺、村田の両四段は既に1勝1敗。今期も苦しそうです。
ニ連勝の矢倉五段、今年こそは昇級してほしい。橋本五段も二連勝で、この人は関西復帰を起爆剤にして、ぜひ今期昇級を決め手ほしいところ。
関西勢では増田五段もニ連勝といい出だしなんですが、今年の対戦相手が村山、片上、橋本、佐藤和、といったあたりをひかえているので、厳しいかなぁ。
いろいろな見所は毎年、それなりにあるので、今年の話題が少ないと言っても、対戦表を眺めているだけで時間がすぎてしまうのが、将棋ヲタの悲しいサガ。それだけであきません。
なお、ネット上での対戦表は連盟のページよりも、順位戦データベースさんの方が見やすくて優秀です。
http://www.ne.jp/asahi/yaston/shogi/juni/juni64.htm
そんな中、注目していることがもう一つあります。
有吉九段。今年70歳になる棋界の重鎮で、師匠でもある大山十五世名人が東京に移った後、内藤九段とともに関西棋界の顔となり、名人戦では師匠大山とも戦った名棋士です。
大山・中原の全盛時代にぶつかったためタイトルこそ棋聖1期ですが、幾多の棋戦で優勝した、60年代の強豪であることに異論をはさむ人はいないでしょう。
居飛車党で、しっかり玉を囲ってから、怒涛の攻撃を見せることから「火の玉流」といわれたこと、将棋ファンなら基本情報。華麗な内藤将棋は、芸術的なまでに美しい棋譜でしたが、並べてみて勉強になる、という点では、有吉将棋は、中原、大山とともにトップ3だと思います。
今でこそC級2組まで落ちてきてしまいましたが、かつてはA級を21期もはり*160歳A級という、とんでもない記録もあります。*2 
その有吉九段がC級2組にまで落ちてきている。普通なら、この事実は往年の強さが回顧され、哀切を伴ったりするのですが、いろいろなところから漏れ聞くところによると、有吉九段、この年齢になってなお、若手と研究会を続け、「今、現代将棋がまた面白くなってきている」とまで語られているそうです。
かつて、羽生世代が棋界を席巻し始めた90年代に、谷川をして「今、序盤を一番研究されているのは、有吉先生」と言わしめた、研究熱心。老いてますますその情熱はおさまることを知らず、という感があります。
今期NHK杯でも予選を勝ち抜き、本戦1回戦で田中九段(B2、47歳)を撃破、解説にまわっても、7月10日放映の行方―桐山戦で、ズバズバと先の展開を読み、まだまだ見えていることを印象づけてくれました。
その有吉九段、C級2組では、2局終わって2連敗。順位戦の出だしはすこぶる不調です。C2はご存知のように、降級点3回でフリークラス転落。フリークラスでは順位戦はなく、規定の成績をあげないと10年で強制引退*3、ということになるのですが、一方で定年制もあり、10年に満たなくても65歳になれば、即引退、ということになります。従って、有吉九段はフリークラスに落ちた瞬間、引退、ということになってしまうわけです。
つまり最悪の場合、今年を含めてあと3年しか有吉将棋が楽しめない、ということなのです。
今期の対戦相手は、正直かなりきつい。落ちてきたところなので順位がいいため、3勝でも降級点が免れるかもしれませんが、その3勝もかなり厳しい。特に第2戦、降級点2つ持ちの木下六段に破れたのは、すこぶる痛い。
厳しい状態なのですが、かつての関西のライバル、内藤九段がB2で連勝スタートしていますし、ぜひ有吉九段にもがんばってほしいものです。

*1:現役でA級21期というのは、加藤一二三の36期(これもものすごい数字です)、中原の29期、谷川の24期についで4番目の記録。故人、引退棋士を加えても、大山の44期、米長の26期が加わって6位。

*2:もちろん高齢記録として、大山十五世の69歳A級とかがありますが。

*3:中原や勝浦九段のように、降級ではなく、自ら宣言してフリークラスに行った棋士はまた別の基準がありますが。