火星の月の下で

日記がわり。

◇第86回全国高校ラグビー準決勝

第2試合、東海大仰星桐蔭学園。実に良いゲームだった。
関西人なんで、当然仰星を応援してたんだが、桐蔭の、良いも悪いも実に高校生らしいラグビーにちよっと感動してしまった。
結果は、仰星40-13桐蔭と、数字だけ見ると仰星の圧勝なんだが、後半、実にすばらしいドラマがあった。
前半、2トライを上げた仰星に対して、終了直前PGで桐蔭が3点を返して、仰星14-3桐蔭。ここまでは普通の良い試合。
今大会、優勝候補No.1の仰星と、東日本最強の桐蔭の戦い、まずは仰星の組織力が少しだけ上回っていた感じだった。
しかし桐蔭も組織ディフェンス、集散、展開の速さが素晴らしく、なかなかの好ゲーム。
後半に入って、その展開を生かした桐蔭のラグビーがジリジリと仰星を押し上げ、鮮やかな展開でトライを1本返す。仰星14-8桐蔭。
これで、1トライ1ゴールで逆転できるところまで来て、盛り上がる桐蔭。
しかしここから仰星も、連発していた反則をおさえ、バックスラインを整理し、桐蔭陣地内での勝負を続ける。それをこれまた集散の早い組織ディフェンスでしのぐ桐蔭。
後半の中盤くらいまでがこの展開で、まさに手に汗握る展開だった。均衡を破ったのは、バックスが有機的につながり始めた仰星。タテ突進の突破、そしてバックスのステップを切り換える走りで、ついに15番が飛び込んでトライ。仰星19-8桐蔭。
そしてここから仰星、怒涛のトライラッシュとなるのだが、見ていて、桐蔭の組織だったディフェンスがとまってしまっているようだった。
いや、ひょっとすると、バックスラインがディフェンスを切り裂いたことで、機能させなくしてしまってたのかもしれないが、見ている分には、仰星の素早さ、抜け目なさとともに、がっくりと意気消沈してしまったかのような桐蔭の姿が映った。立て続けに4本のトライが決まる。しかもうち3本はノーホイッスルトライである。仰星40-8桐蔭。
こりゃ、準決勝らしからぬ大差がつくかな、と思ったとき、残り時間わずかとなって、桐蔭がヤケクソのような反撃に出る。
それまで選手の顔に漂っていた「ああ、今年もダメか」という表情から、悲壮感は残っていたものの、「もうやれるだけやれ」という死に物狂いさに変わってきたようだった。
次々にパスが決まり、今度は桐蔭が仰星のラインを切り裂いて、ついに終了直前にトライ。仰星40-13桐蔭。
最後によく粘った、と思っていると、ロスタイム1分に入ってからも攻める攻める。
結局、それ以上のトライにはならず、ここでノーサイド
いやあ、実にさわやかな、すばらしい試合だった。
流れを呼び込み、追いかけていた矢先、引き離されて、ガックリとくる高校生。しかし、最後に土壇場の意地を見せて1トライもぎとるひたむきさ。高校生の強さと弱さが同時に伝わってくるすばらしいチームだったと思う。
3位表彰式で、桐蔭の選手は泣いていたけれど、なんか久しぶりに敗者の涙が美しい、と思えたゲームだった。
こんなに負けた方のチームに感動させられるなんて、あの63回大会決勝で天理に敗れた大分舞鶴以来のような気がする。
この桐蔭学園、敗れたと言っても、主力の多くは2年生。来年は関西勢にとって、脅威のチームとして戻ってきそうだ。
さて、準決勝のもう1試合は、仰星、桐蔭とともにAシードの東福岡が大工大を53-10で降して勝ち上がり、決勝は仰星-東福岡となった。
下馬評では抜群の優勝候補だった仰星だが、ここまのでの戦い方を見ていると、東福岡の方が突進力が強いように見えるが、はてしてどうなるか。
3回戦の茗溪、ベスト8の仙台育英を手玉にとった大工大のSO池上が、まったく仕事をさせてもらえなかったすごさを見ると、やや東福岡が有利かなぁ、という気がするが・・・。