火星の月の下で

日記がわり。

サイボーグ009・TV第1シリーズ

録画で見たので、ちょっと遅れたが、BS2の石森章太郎の世界・サイボーグ009を見た。
単に作品を放映してくれるだけならまだいいんだが、ファン代表みたいな漫画家とかコメンテーターとかが、けっこう勘違いというか、共時制を全然理解してない発言とかがあって、だれることこの上なかったんだが、連中の勘違いを糾弾するのが本意ではないので、軽くスルーするとして、久しぶりに劇場版第1作と、第1シリーズ第2話「Xの挑戦」を見たので、その感想を。
アニメブログに書く予定だったんだが、どうも資料を調べてたら、書けるかどうかわかんなくなったので、断片ではあるけど、感想として残しておく。
劇場版第1作。
たしか新開地の映画館で公開日か次の日くらいに楽しみにして行った。そしてがっかりした。(笑)
だって絵が違いすぎるんだもん。おまけに、007の設定変えてたし。
特に、後半の改造003の修羅のごとき形相は、かなり生理的に不快感があったのを憶えている。
この後の第2作「怪獣戦争」こっちはかなり見れた。翌年だったと思うけど。
とにかくヘレナが美しくて、見ほれていた記憶があるが、今回はこの第1作の方だったので、当時見てもひどかったけど、今見たらいっそうだなぁ、と思ったわけだ。
良くも悪くも東映色が色濃く出てて、東映の「愛のテーマ」とか「スリルのテーマ」なんてのは、出てくるたびに、おいおいまたかよ、とか思ったものだったけど、この辺は今聞くと妙に懐かしいね。
まぁ、やるんなら「怪獣戦争」の方をやってくれよ、と思った、くらいは書いといてもいいかな。(^_^)
さて、第1シリーズ第2話「Xの挑戦」。
『怪獣戦争』の翌年に、スタッフを一新して始まったこのシリーズ、モノクロアニメのほぼ晩年の作品。
昭和43年だから、カラーTVアニメ第1作『ジャングル大帝』(昭和40年)から既に3年の月日が経ち、『悟空の大冒険』『マッハGoGoGO』『リボンの騎士』といった後続のカラーアニメも始まっていた頃だ。
同じ昭和43年には、1ヶ月早く『巨人の星』もスタートしている、そういうモノクロとカラー作品が混在していた時代でもあった。
ということで、カラー作品の後にモノクロ作品、という順番になってしまったが、少なくとも劇場版第1作よりは格段に良かった、という記憶がある。
依然として007のチビッコ設定は継続していたが、それ以外は、かなり原作の絵に近づいた印象があったからだ。
ちなみに雑誌連載の方は、キングからマガジンに移って始められた「地下帝国ヨミ」の連載が終った頃である。
ベッドシーンを入れたことでファンから総すかんを食ったCOM連載版「神々との戦い」はこれの2年後、昭和45年。
第2話「Xの挑戦」は、2クールあったこの作品の前半の代表作として取り上げられることが多く、たしかロマンアルバムでの誌上ロードショーとしても再現されていたと思う。今手元にないので、記憶で書いているが。
たしかに、前半はまだおとぎ話的なエピソードが多く、ギャグが勝ってるようなところもあって、原作の孤独と憂愁に充ちた叙情性はかなり希薄だったんだけど、後半から、一気に名作といっていいエピソードが現れる。
どちらかというと、後半の傑作群を取り上げてほしかったけどね。
そんな中から、割と好きなエピソードを簡単に回顧しておく。
第12話「天かける巨人」
航空機開発競争とスパイ戦をテーマにした技師の物語。
結局技師は航空会社を去るハメになるが、彼の意思をついだ形でパイロット島村ジョーが、技師の設計した飛行機を無事テストフライトさせる、という話。地味といえば地味だが、よくできた話だと思った。
ちなみに、この技師の孫娘・アンナと009の間に、ロマンスっぽい雰囲気が出てくるのだが、ここのシーンも実にロマンティックで良かった。
第15話「悲劇の獣人」
原作短編にもあった、未来から来たミュータントの話。
原作を準拠している数少ない話なので、どうしても原作と比較してしまう、それゆえ評価が辛くなるきらいはあるが、この時代の作品としてはよくできている方だと思う。
未来から来たミュータント、ノアと妹リナが、009と003の子孫でした、というくだりが、とんでもなくエロティックなんだが、わりとサラッとやってたような記憶がある。
第16話「太平洋の亡霊」
戦争の傷跡を描く佳作。
旧帝國海軍の軍用機が現れ、ハワイを攻撃、そして放射能汚染された戦艦長門が復活し、サンフランシスコをめざす。
魔力のごとき力で、各国の軍隊を殲滅する人間魚雷や航空機のまえに、各国はなすすべもなかった。
009はこの背景に、息子を特攻でなくした狂気の科学者の存在を知り、なんとかこれを断念させようとするが・・・。
ラストのオチがややオカルトなので、作品の価値を減じてはいるものの、敗戦からまだ20年ちょっと程度の時期の作品としては、けっこう心理的な現実感があった作品でもある。
第19話「恐怖の原潜シースネィク号」
最新鋭の軍備装備をしたまま消息を絶ってしまった米・原潜シースネィク号。
その背景に機械を崇拝するある科学者の狂気があり、サイボーグ戦士たちが、この科学者の潜む機械の島へ乗り込んでいく。
今日の観点で見ると、幼稚なつくりではあるが、前半にはあまりなかったシリアスな戦いが展開される。
第22,23話「復讐鬼」前後編。
私的には、第1シリーズの最高傑作だと思っている。同時にシリーズ唯一の前後編。
ある囚人が謎の死をとげ、003の目になにか異常なものが映じる。そしてまた別の人物が謎の狂死をとげる。
心霊学者・江木は、かつて旅行中、酔漢の暴行によって、衆人看視の中で殺されてしまった。その娘照世が、父の復讐のために、父が作った特殊な機械を使って白い怪物のようなものを見せて、犯人を、そして見て見ぬふりをしていた周囲の人間を次々と殺していったのだ。
003はそのうちの1人と容貌が良く似ていたので、間違えられたのである。
復讐は進行し、そのとき周囲にいた人は次々と殺されていき、残った人間がとある古城に拉致され、そこで殺し合いを強要される。その中に囚われた003もいた、というのがだいたいのあらすじ。
とにかく緊迫感のある画面、前編では動機の不鮮明な、まるでつながらない狂死事件、そして後編ではとらえた人間同士に殺し合いをさせるという狂気、とにかく異常なテンションで進行するサスペンスもので、003が古城に監禁されて、つるされる、というすこふる色っぽい場面なんかもあったりして、そっち方面でもかなりドキドキするつくりになっている。
モノクロアニメ全体を通しても、これほどのサスペンスを持ったエピソードは少ない佳品だと思う。
003がつるされるシーンは、彼女だけ殺し合いを拒否するので、最後に勝ち残った男に、ヒヒヒと狂気の相貌で迫られて「ああ」と絶体絶命の声を発するのだが、ここがすげーよかった。(笑)
古城の中をレーザーガンを片手に、タイトスカートで逃げ回る姿も、なかなか感動的だったなぁ。(^_^;
第24話「非情な挑戦者」
サイボーグ戦士達に挑戦してくる、クルテール兄弟という、名前そのまんまの狂ってる試験管ベビー出身のパイロットが出てくる話。
構成としてはイマイチで、話としてはそれほどでもないんだけど、このクルテール兄弟のキャラクターが強烈なので、一見の価値ありだと思う。
なお、この兄弟の被害にあう少女が出てくるのだが、少女マンガ時代のちばてつやキャラクターにそっくりなのが、けっこう面白い。(^_^)
第26話「平和の戦士は死なず」
2大陣営の爆撃機が消息を絶ったり、相手に攻撃されたりして、世界は最終戦争直前の一触即発状態になる。兵士達のマスコット人形に、異様な力を感じた001は009とともに現地へ急行するが、その途中不思議な空間に飲み込まれる。
そこにはあのマスコット人形がいて、世界の破滅を語る。
世界戦争にむけて、ついにICBMが発射されるが、009は決死の覚悟でそれを阻止しようとする。
マスコット人形が、人類の悪意の総意として、ケラケラ笑いながら009の前に現れ、世界の破滅を語るシーンのシュールさはなかなか秀逸。
一応これで最終回なんだが、それにふさわしい不気味なテーマを世界規模で扱ってくれていた。これもなかなかに秀作だったと思う。
というわけで、今度リバイバルされる予定とかがもしあったら、第12,22,23,26話、といったあたりをお願いしたいもんですな。(^_^)
それと、なにげにこの第1シリーズ、当時の水準で言うと、女の子が可愛いかったのだ。
上にあげた第12話のアンナなんかその典型だけど、第6話「ガリラヤ王救出作戦」のバレリーナ003、「復讐鬼」のタイトスカートな003、と003もかなりキュートに仕上がっている。
もちろん、あくまで当時の水準としては、という但し書きが常に必要ではあるが、このテレビシリーズはかなり楽しんで見ていたものだった。