火星の月の下で

日記がわり。

バーバリアンズ

またヒストリー・チャンネルでバーバリアンズをやってたので、ぼんやりと見ていた。
現在放映のシリーズは1.バンダル族、2.フランク族、3.サクソン族、4.ランゴバルト族の「バーバリアンズ2」で、4まで通して見た今となっては、けっこうセットや役者の使い回しが多いので、一昨年初めて見たときに比べるとちょっと感動も薄れてはくるものの、この時代への感心は深いので、なんとはなしに見てしまうのう。
それにしてもガイセリックというのは、一代の英雄王だよなぁ、としみじみ思うね。
カトリック側に対してやった残酷な弾圧と略奪が、カトリック側の知識層に憎しみをもって記録されてしまったので、テオドリックのように大王と呼ばれるには至らず、クロードヴィヒ(クローヴィス)のように世界史の教科書に太字で載ることもなかったけど、同時代資料とか読むと、ゲルマン側の一大英雄王だったよなぁ、という気が強くする。
もちろん、西ローマの滅亡期にあった、という時流に乗ったところはあったにせよ、あれだけの行程を、8万を越えるといわれた民草を抱えて移動していった、そして安住の地を得て王国まで作ってしまった、というのは、もうそれだけで相当すごいことだと思う。
ガイセリックの後、彼ほど有能な王が出ることもなく、ヴァンダル王国は1世紀も続くことなく崩壊してしまう、というのも、東ゴートのテオドリックと似ているが、テオドリック大王の方は、ローマ人や教会関係者を保護していたので、後世ガイセリックほど悪く言われることはなかった。
ガイセリックのほとんど唯一の失敗としては、後継者、もっと言うと後継組織をしっかりと作っておかなかったことくらいだけど、これを民族移動期のゲルマン王に求めるのは酷だよなぁ。東西ローマの皇帝ですらできずに右往左往してたんだから。
民族移動期のゲルマン人王で、ガイセリックほどひかれる人物はいない。
フン族と渡り合ったローマのゲルマン人将軍アエティウス、大河を渡河して大移動のきっかけを作った西ゴートのフリティゲルン、さらにローマを略奪し、最初にローマを恐怖の淵にたたきこんだアラリックとその後継者アタウルフ、といったあたりにも、相当の興味はあるが、なんといってもガイセリックに一番の魅力を感じるところだ。
このガイセリック、どうも尋常な出自ではなかったらしい、とラテン側に記録されているのも興味深い。
既に『ヴァンダル王国史』は、邦語でも松谷健二氏のすばらしい著作があるが、ラテン語の原典を読み解いていく楽しさはかなりまだ残っていると思う。